『テセウスの船』“家族の愛”は取り戻せるのか? 竹内涼真と鈴木亮平をつなぐメロディ

『テセウスの船』時空を超える父と子の絆

 心は千夏が死亡した日の不審な行動を見て、佐野をパラコート誤飲事件の容疑者ではないかと疑う。一方、佐野も身元不明の心を事件に関係のある人物として警戒。相互に不信感を抱き、疑うことしかできない父と子の姿は、31年という時間の長さと事件が家族に残した傷の大きさを感じさせた。佐野が音臼小事件の犯人ではないかという疑念は、佐野の足どりを追って心を森の中に向かわせることになる。

 最終的に佐野と心の中にあったわだかまりは解けるが、その過程で心は父の真実を知ることになる。自らの命を顧みず、「子どもを守るのが大人の使命」と言う佐野の言葉を耳にした心は、亡き妻に向かって「俺の理想の父親はどんなときでも家族と向き合える男。佐野文吾が俺の父さんでよかった」とつぶやく。心が奏でるハーモニカのメロディは、佐野が大好きな「上を向いて歩こう」だった。母の胎内で、知らないうちに父と子は出会っていたのだ。

 31年の時を超えて明かされるタイムスリップ・ミステリーで、過去が書き換えられたとき、もう一つの未来で心と佐野はどうなってしまうのか? すべての謎が解き明かされたとき、心が出会うのは前と同じ家族なのだろうか? 令和から平成へという時代の裂け目に飲み込まれた主人公が、ひとつしかない父との絆を確かめる『テセウスの船』の行方を見守りたい。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログtwitter

■放送情報
日曜劇場『テセウスの船』
TBS系にて、2020年1月スタート 毎週日曜21:00~21:54放送
出演:竹内涼真、榮倉奈々、安藤政信、貫地谷しほり、芦名星、竜星涼、せいや(霜降り明星)、今野浩喜、白鳥玉季、番家天嵩、上野樹里(特別出演)、ユースケ・サンタマリア、笹野高史、六平直政、麻生祐未、鈴木亮平
原作:東元俊哉『テセウスの船』(講談社モーニング刊)
脚本:高橋麻紀
演出:石井康晴、松木彩、山室大輔
プロデューサー:渡辺良介、八木亜未
製作:大映テレビ、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/theseusnofune/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる