『フィッシャーマンズ・ソング』監督が語る、音楽映画の醍醐味とイギリス国内の文化の違い

「ポート・アイザックは、“コミュニティ”という感覚が強い」

ーーマネージャーであるダニーのストーリーについては多くが創作部分ですが、そこはどう作り上げていきましたか?

フォギン:ダニーには僕自身共感する部分が多かったんだ。僕は北部の出身で、映画業界で仕事をしたいという目標を持ってロンドンに出てきた。ダニーがフィッシャーマンズ・フレンズと出会って、信頼を得て契約に漕ぎ付けるという、自分のゴールや目標を達成しようとする道のりに、僕自身も重なるんだ。実は、ポート・アイザックでの撮影には僕の家族も一緒に行ったんだ。当時ロンドンの中心地に住んでいたんだけど、作品を撮り終わってから少し田舎のほうに引っ越したよ(笑)。ポート・アイザックでの滞在が素晴らしい思い出になっていて、その風景や空間を求めていたんだろうね。

ーー確かにポート・アイザックの豊かな自然あってこその物語だと感じました。

フォギン:この映画のスケール感や温かみを捉えることができたのは、ポート・アイザックの土地があったからこそなんだ。天気にも恵まれて、この大地の一番美しい状態の景色を撮ることができて、それはストーリーを綴る上でも重要だった。僕自身の体験や、自分の目で見た風景をそのまま捉えることができた。その意味では、この映画は、ポート・アイザックへの僕たちからのラブレターだと思うし、この土地が僕たちを許してくれた。この映画を見たたくさんの人に、ぜひこの地域を訪問してみてほしいです。


ーー家族だけではなく、同じ土地に住む隣人同士で相談しあったり支え合っていく人間関係が魅力でしたが、それはやはり首都であるロンドンとは違うものでしたか?

フォギン:そうだね。その関係性が、僕たちが滞在を楽しんだ理由のひとつだと思う。僕はロンドンが大好きだけど、都市はやっぱりみんな頭を下にして歩いていて、誰も挨拶をしたり声をかけあったりはしない。でもコーンウォールでは、朝は必ず挨拶し合うし、みんなが話しかけてきて、お互いがお互いのことを何か起きないようにと、いい意味で目を配っていてる。そして何かいい出来事があれば、そのストーリーをみんなと分かち合える。友情や家族、コミュニティは大都市もあるけれど、比べるとやっぱりどこか希薄で、そこまでやりとりがないように思う。ポート・アイザックは、“コミュニティ”という感覚はとても強く、サポートしあえるところが素晴らしいよね。

■公開情報
『フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて』
新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開中
監督:クリス・フォギン
製作・脚本:メグ・レナード&ニック・モアクロフト
出演:ダニエル・メイズ、ジェームズ・ピュアフォイ、デヴィッド・ヘイマン、デイヴ・ジョーンズ、サム・スウェインズベリー、タペンス・ミドルトン、ノエル・クラーク
音楽:ルパート・クリスティー
配給:アルバトロス・フィルム
提供:ニューセレクト
2019年/イギリス/英語/112分/日本語字幕:浅野倫子/映倫:G 
(c)FISHERMAN FILMS LIMITED 2019

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