年末企画番外編:ナマニクの「2019年 年間ベストホラー映画TOP10」 昨年に引き続き豊作の1年に

ナマニクの「2019年ホラー映画TOP10」

7.『セーラ 少女のめざめ』

『セーラ 少女のめざめ』(c)2014 ASTRAEUS PICTURES,LLC ALL RIGHTS RESERVED

 ようやく日本公開に漕ぎ着けた2014年製作のインディペンデント映画。当時は『スリーデイズ・ボディ 彼女がゾンビになるまでの3日間』をはじめ、何故か“女性が腐る”というプロットが大流行しており、本作も“女性が腐る”映画群の1作。だが、並み居る同プロットの作品の中ではトップクラスのクオリティを持つ。

 売れない女優が、カルト教団に取り込まれ、悪魔の器になる過程で体が腐っていく。とにかく腐りゆく体の描写が強烈だが、実は緻密に作り込まれた作品だ。タイトル表示はモチロンのこと、音楽や効果音に注意していると様々なイースターエッグが隠されているに気が付くだろう。ケヴィン・コルシュとデニス・ウィドマイヤーというコンビ監督は本作で注目され、リブート版『ペット・セメタリー』の監督に抜擢。来年、日本公開予定だ。

6.『ハイ・ライフ』

 あまりにも断片的な情報のみが提示されるため、難解かつ退屈な作品と言及されることが多い作品。しかし、突き詰めれば宇宙船という究極の刑務所で、長期間暮らすことを強制された受刑者が気が狂うだけの話だ。「これはホラーなのか?」と問われたら、私は「ホラー」だと答える。血と乳と愛液と精液、糞尿、あらゆる分泌物を偏執的に描く様は、まさにホラーだ。

 ホラー映画はエクストリームかつ即物的な残酷描写ばかりに着目されることが多いが、本作はそのカウンターだといえる。宇宙空間を“落下”する死体、乗組員を骨抜きにする自慰マシン、ブラックホール……異様な世界観。そしてジュリエット・ビノシュとミア・ゴスの目。あれはまさに狂人の目だ。

5.『ザ・バニシング-消失- 』

『ザ・バニシング‐消失‐』(c)1988 Published by Productionfund for Dutch Films

 “人が消える”という事象を“消された側”からの視点と“消した側”からの視点で描く。

 “消した側”(誘拐犯)は驚くほど論理的な行動を取り、“消された側”は、何故人が消えたか? という“解”を求め続けるあまりに逸脱した行動を取る。本作は両者の差を冷徹に描いている。もちろん前者の行動は常軌を逸しているのだが、妙に納得させられてしまうのが恐ろしい。そして後者の喪失感に苛まれる苦しみを取り除く、至福かつあまりにも残酷な結末は、観客の心までも消し去る。

 1993年の作品だが、当時はビデオスルー。HDリマスターに合わせて本年、晴れて劇場公開となった。

4.『ゴーストランドの惨劇』

『ゴーストランドの惨劇』(c)2017 – 5656 FILMS -INCIDENT PRODUCTIONS -MARS FILMS -LOGICAL PICTURES

 『トールマン』(2012年)以降、沈黙していたパスカル・ロジェの6年ぶりの監督作。『マーターズ』(2008年)から続く、女性への過剰な暴力描写は更に加速、変態性を爆発させている(ちなみに撮影中、主演女優の顔面に怪我を負わせてしまい裁判沙汰になっている)。さらに今回は現実と妄想、時間軸を巧みに交差させる映像トリックを駆使。二転三転するストーリーは、何度も観客を絶望のどん底に突き落とす。まさに悪夢を体現した作品。

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