『G線上のあなたと私』に込められた「女はつらいよ」の数々 MVPは松下由樹演じる主婦・幸恵さんへ

『G線上のあなたと私』MVPは松下由樹

 初めて聴いた眞於先生のバイオリンが彼女たちを救ったのは、たぶん、先生もその美しさからは想像できないたくさんの「つらい」を背負っていて、そういう音を出していたから。その後、バイオリンから離れようとする眞於先生もまた、彼女たちと理人くんの下手な「G線上のアリア」に救われる。つらいことを抱えた人が、ほかのつらい人をそっと救っていき、それが優しい輪になっていく。「もし私たちが二度と会えなくなっても大丈夫」と幸恵さんは言った。そうですよね、優しい輪は途切れてもまたつなぎ直せる。

 このドラマがみんなに愛されたのは、也映子と理人くんのぎこちない恋の行方ももちろんのこと、それを見守る主婦幸恵さんがとってもステキだったことも大きいのではないでしょうか。たぶんドラマを見ていた人たちとかなり近い立場で、「つらい」の内容も同じ感じで。そんな、自分たち代表みたいな彼女が、「つらい」から逃げずに、いつでも誰かを応援してる姿、ほんとにかっこよかった。彼女がこれからも、バイオリンを続けていけますように。またバイオリン三銃士が集まって、上手ではないけれど暖かい、気づかないうちに誰かをそっと救うようなコンサートが開かれますように。

 明日からもまだまだ待ち受けている「つらい」を乗り越えてなんとか生きるために、私たちそれぞれのバイオリンとG線上のアリアを、それを分かち合える仲間を、見つけていけたらいいですね。

■渡辺裕子(わたなべひろこ)
TVドラマ好きイラストレーター。「月刊ローチケHMV」などで、コラム連載中。
ツイッター:https://twitter.com/satohi11

■作品情報
火曜ドラマ『G線上のあなたと私』(TBS系)
出演:波瑠、中川大志、松下由樹、桜井ユキ、鈴木伸之、滝沢カレンほか
原作:いくえみ綾『G線上のあなたと私』コミックス全4巻(集英社マーガレットコミックス刊)
脚本:安達奈緒子
演出:金子文紀、竹村謙太郎、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:佐藤敦司
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/gsenjou/

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