『呪術廻戦』の主役にも抜擢 声優・榎木淳弥、『BEASTARS』で見せるマルチな才能の一端

 榎木は、アニメのみならず映画でも活躍している。その多くが、主人公やメインキャラクターであるから驚きだ。2018年に公開された『機動戦士ガンダムNT』では主人公のヨナ・バシュタを演じた。また、トム・ホランドに主演がバトンタッチされてからの『スパイダーマン』シリーズでは、ピーター・パーカーの吹き替えを担当している。『スパイダーマン:ホームカミング』のクライマックスシーンでは、ピーターに感情移入するあまり、実際に涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら収録したという。

 若手の中でも随一の人気を持つ声優の一人となった榎木だが、幼少時から声優を志していたわけではない。20歳の時に、今石洋之監督作『天元突破グレンラガン』に感銘を受け唐突に声優を志し、大学を中退したというエピソードがある。現在所属するアトミックモンキーの養成所オーディション締め切り日の夜に、応募書類を自らの手で事務所のポストに投函したという。そんな榎木は2017年、人生の転機となる作品を生み出した今石監督の『宇宙パトロールルル子』で、ヒーローであるΑΩ・ノヴァを演じている。

 榎木の魅力は、声の演技だけではない。時折垣間見せる意外な素顔も、ファンが増え続ける要因となっている。「夏休みの宿題は、夏休み最終日の夜中にトイレに籠ってなんとか終わらせた」(ラジオにて本人談)と語り、さいたまスーパーアリーナにて開催された『アイドルマスター sideM』のライブイベントMCにて「僕の家へようこそ!」と発言するなど、身近に感じられるお調子者といった性格であるが、根は真面目であることがわかる。トークステージやラジオでは共演者の反応を楽しむような発言もあるが、ファンと交流できるイベントでは、ファン一人ひとりの話を聞き、気遣うやさしさを見せる。様々な役柄を、意識しなければ気づかないほどに演じ分けているのは、彼が声優という仕事に真剣に向き合っているからこそ感じ取れるものだろう。

 加えて、ストレートプレイの演劇や落語に出演してたり、声優ユニット「8P」では歌やダンス、バラエティ番組や朗読イベントに取り組んだりと、声の演技以外にも様々なことに挑戦している。全てに正面から向き合う榎木を見ていると、思わず応援したいと思わせてくれる。今後の活躍が楽しみである。

■誉田優
名作と聖地を求めて旅するフリーライター・コラムニスト兼記者。この世に生み出された作品の空気を味わうことが生きがい。Twitter

■放送情報
TVアニメ『BEASTARS』
フジテレビ「+Ultra」にて毎週水曜日24時55分から放送
声の出演:小林親弘、千本木彩花、小野友樹、種﨑敦美、榎木淳弥、内田雄馬、大塚剛央、小林直人、下妻由幸、岡本信彦、落合福嗣、虎島貴明、渡部紗弓、室元気、井口祐一、原優子、兼政郁人、大内茜、山村響、あんどうさくら、大塚明夫、星野充昭、堀内賢雄
原作:板垣巴留(秋田書店『週刊少年チャンピオン』連載)
監督:松見真一
脚本:樋口七海
音楽:神前暁(MONACA)
制作:オレンジ
公式サイト:bst-anime.com
公式Twitter:@bst_anime

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