アメリカ映画界を席巻中 『パラサイト 半地下の家族』現象を考える

米映画界の『パラサイト』現象を考える

 ローカリズムと同時代性の高い社会的テーマ。今年公開された日本映画の「秀作」とされている作品を振り返ってみると、前者(ローカリズム)に軸足が寄りすぎていて、後者(同時代性の高い社会的テーマ)に向き合っている作品、あるいはそこで芯を食っている作品がとても少ないことに考え込んでしまう(少なくとも『天気の子』にはそのどちらもあったので、同作をアカデミー賞に提出した日本映画製作者連盟の判断は妥当だと自分は考える)。もちろん、すべての映画が海外を目指すべきだとは思わないが、特に実写映画に関しては国内作品のマーケットの縮小が年々進んでいて、その一方で各ストリーミング・サービスがグローバルで勝負のできるオリジナル・コンテンツを奪い合っている現在、その視点の必要性は今後確実に増していくだろう。『パラサイト 半地下の家族』の快挙から、日本映画界が学ぶべきことは少なくないはずだ。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『パラサイト 半地下の家族』
2020年1月10日(金)、TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
出演:ソン・ガンホ、イ・ソンギュン、チョ・ヨジョン、チェ・ウシク、パク・ソダム、イ・ジョンウン、チャン・ヘジン
監督:ポン・ジュノ
撮影:ホン・ギョンピョ
音楽:チョン・ジェイル
提供:『パラサイト半地下の家族』フィルムパートナーズ
配給:ビターズ・エンド
2019年/韓国/132分/2.35:1/英題:Parasite/原題:Gisaengchung/PG-12
(c)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
公式サイト:www.parasite-mv.jp

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