フィリップ・ラショー監督が語る、『シティーハンター』への愛と、日本のアニメ・漫画から受けた影響

フランス実写版『シティーハンター』監督が語る

 北条司の漫画『シティーハンター』をフランスで実写化した映画『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』。『世界の果てまでヒャッハー!』のフィリップ・ラショーが監督と主演を務めて実写化した本作は、フランスで公開されると、観客動員168万人を突破する大ヒットを記録した。フランスではかねてより日本のアニメーションや漫画が人気を博しているが、本作はコアなファンのみならず、幅広い層に支持が広がっているようだ。日本では今年2月に20年ぶりの新作となる長編アニメーション映画『劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>』が公開されたが、本作では「実写版シティハンター」として、新たに山寺宏一が冴羽リョウ役、沢城みゆきが冴羽リョウの相棒・香を演じ、さらにアニメ版でおなじみの神谷明、伊倉一恵もスペシャルゲストとして参加する日本語吹替版で上映される。

 かねてより『シティーハンター』の大ファンだったというフィリップ・ラショー監督。本シリーズに魅了された理由や実写化の裏側、そしてフランスでの日本のアニメーション・漫画の人気について話を聞いた。

「無敵で絶対に負けない冴羽リョウに憧れた」

ーー監督はもともと『シティーハンター』の大ファンということですが、あらためてどこに惹かれたのでしょうか?

フィリップ・ラショー(以下、ラショー):やっぱり冴羽リョウがすごく魅力的だと思うんだ。僕が彼を知ったのは子どもの頃だったけれど、すべての少年があんな男になりたいと思うようなキャラクターだった。面白くていいやつで、けれど危険が迫ったり誰かを救うとなった時の無敵で絶対に負けないだろうという存在感に憧れたね。

ーーあなたはこれまでも監督兼主演で作品を作ってきましたが、今回も誰かにリョウを演じてもらおうとは思わなかった?

ラショー:そうだね。自分で演じようと思っていたし、僕は監督で決定権があるから(笑)。でも、やっぱりプレッシャーはとても大きかった。『シティーハンター』のファン、冴羽リョウのファンを裏切りたくないという思いがまず第一にあったから、アニメや漫画をもう一度見直して、ジェスチャーや仕草を勉強し直したんだ。たとえば、アニメだったら、デフォルメされた口の動きや表情も作れるけど、演技だったら限界がある。鏡の前で練習したり試行錯誤をしながら、滑稽になりすぎないように作り込んでいったよ。

ーーこうやって監督に直接お会いしたら、映画の中の冴羽リョウとは全然違う風貌で驚きました(笑)。

ラショー:ははは、それは嬉しいな(笑)。リョウになるには、自分自身は消さなければならないからね。コミカルなシーンではリョウの子どもっぽい部分や無邪気さを全面に出し、逆にアクションシーンでは、真剣さやニヒルな部分、闇の部分を意識して、極端に誇張していったんだ。

ーーアクション、ドラマ、コメディと原作の味がそのまま出た内容になっていると感じましたが、フランスで映画化するにあたりアレンジを加えようとは考えなかったのでしょうか?

ラショー:それらの要素でどうバランスをとるか、長い時間をかけて話し合ったし、その結果ベストな配分になったと思う。北条司先生がおっしゃっていたのは「何よりこれはコメディなんだ」ということ。笑っていい作品だとおっしゃっていたので、僕もそこは踏襲していったよ。

ーー全編にわたってありとあらゆるギャグが展開されていくのは、コメディアンとしてのあなたらしさが出ているように感じました。

ラショー:そうだね。逆に僕にとって挑戦となったのはユーモラスではない部分。シリアスであったり、アクション、恋愛の駆け引きなどドラマチックな部分かもしれない。新しいことに挑むのは俳優冥利につきるけれど、それを成功させられるかどうかは、今回ひとつの賭けだったと思う。

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