佐藤大樹×井上博貴監督が語る、詩・音楽・映像が融合した「CINEMA FIGHTERS」ならではの挑戦

佐藤大樹×井上博貴監督対談

佐藤「リアルな高校生の心情に合わせた歌詞」

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――ヒロインの久保田紗友さんとの共演はいかがでしたか?

佐藤:久保田さんは同年代なのにすごく落ち着いた印象で、良い意味でオンとオフがない女優さんでした。カメラが回っていなくても、同じ調子で僕に話しかけてくれるんです。もしかしたら、あの現場ではずっと役に入ったままでいようとしていたのかもしれません。久保田さんのおかげで、僕も自然と雅人になれた部分があったのかなと。撮っている時は気づかなかったけれど、実際に出来上がった作品を観て、「こんなに深い芝居をしていたんだ」と感じた部分もありました。

井上:今回の作品にぴったりの女優さんでしたね。ビジュアルはもちろん、演技も素晴らしかったと思います。

――今回のテーマソングとなっている「ライラック」の印象は?

井上:世界観がしっかりと確立されていて、すごく情景が浮かんでくる楽曲に仕上がっていると感じました。小竹さんのアイデアをもとに僕があらすじを書いて、それに対して歌詞をもらって、その歌詞からさらに脚本を組み立てて、という風に制作していったのですが、楽曲と映画をしっかりすり合わせたことで、エンドロールでこの曲が流れたときにカタルシスを感じられる構造になったと思います。

佐藤:歌詞の中に羊が出てくるのが印象的でした。羊は同じ制服を着た生徒たちのメタファーで、雅人もまた羊の群の中の一頭だったのが、恋を通じて群から出る決心をする、いわば成長物語を描いた楽曲でもあるのかなと。小竹さんの歌詞は大好きなのですが、中でも今回は特に明瞭なイメージを持って描いた作品だと感じています。一方で、「~でしょう?」と問いかけるような言い回しはなくて、おそらく歌う琉衣さんの年齢ーーリアルな高校生の心情に合わせた歌詞になっているとも感じました。

井上:大樹くんの分析すごいですね(笑)。ものすごく的確だと思います。

井上「セリフに頼らない映像表現を突き詰めてみたい」

――「CINEMA FIGHTERS project」の他の作品の印象についても聞かせてください。まず、三池崇史監督とAKIRAさんの「Beautiful」はどんな風に観ましたか?

佐藤:僕はこれまで観たAKIRAさんの作品の中でも、トップレベルで好きな作品でした。三池監督との相性もあるのでしょうが、AKIRAさんが人知れず抱えているだろう苦悩や葛藤や恐れがちゃんと描かれていて、なおかつその奥にある優しさや人情が滲み出ています。しかもラストではサプライズもあって、一品で二度美味しい、ひつまぶしのような魅力のあるショートフィルムです。三池監督の普段の作風とは一味違うところも新鮮で、「こんなに優しい作品を撮る方なんだ」と、改めて尊敬しました。

井上:なんて素晴らしいコメント(笑)。本当に三池監督の作品としても新鮮で、俳優二人のむき出しの心を描こうとした作品だと感じました。大樹くんの言う通り、作品の向こうにAKIRAさんのパーソナリティが垣間見える、とても奥行きがある作品だと思います。

――松永大司監督と今市隆二さんの「On The Way」は?

佐藤:まず感じたのは、メキシコロケの画がめちゃくちゃ綺麗だということ。松永監督の作品らしく、あえてドキュメンタリーのような感じで撮っているのも印象的でした。本当にその場でアドリブで撮っているかのようで、今市さんの振る舞いもとてもナチュラルです。ボーカリストにはパフォーマーにはない独特の存在感があるのですが、そのポテンシャルを最大限に活かした作品だと思います。

井上:私はもともと松永監督のファンで、特に『トイレのピエタ』には深い感銘を受けていました。松永監督は新作に向き合うたびに挑戦を続けている方で、今回の作品でもその姿勢が感じられました。今、監督はアメリカに渡っていますけれど、メキシコロケを行った「On The Way」は、海外生活で得た感覚が反映されているように思います。

――洞内広樹監督と佐野玲於さんの「GHOSTING」はどうでしょう。

佐藤:僕はEXPG STUDIOという総合エンタテインメントスクールに通っていた頃から、玲於くんのことをよく知っていて、『シュガーレス』(日本テレビ/2012年)という同じドラマ作品で俳優デビューをしています。僕よりも年下だけれどスクールの大先輩で、憧れの存在でもありました。だから、役者としては今回、一番意識した人かもしれません。今作は主人公が幽霊になって過去のある1日に戻るという設定の作品なのですが、玲於くんがさらに上手くなっていると感じましたし、いい意味で刺激的でした。

井上:洞内監督とは何度かお話をする機会があって、映画の好みなども話し合ったことがあります。「GHOSTING」は、そんな洞内監督の趣味が発揮されたエンタメ作だという印象です。おそらく、『ターミネーター』好きが高じて、未来から過去へ行くストーリーになったのかなと。私とは語り口が対照的なので、「魔女に焦がれて」と見比べても面白いかなと思います。

『Beautiful』
『Beautiful』
『海風』
『On The Way』
『On The Way』
『GHOSTING』 
『GHOSTING』
『魔女に焦がれて』
『魔女に焦がれて』
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『Beautiful』
『Beautiful』
『海風』
『On The Way』
『On The Way』
『GHOSTING』 
『GHOSTING』
『魔女に焦がれて』
『魔女に焦がれて』
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――行定勲監督と小林直己さんの「海風」についても教えてください。

佐藤:直己さんの持ってるすべてが、しっかり役柄で表現されている作品だと感じました。直己さんは役者としての存在感があって、すごく画になる方なんですけれど、今作は特に映えていると思います。ちょっとした食事のシーンでも、内側から滲み出る説得力が感じられるというか。アウトローな役柄の中に人間味を感じさせる演技はさすがです。

井上:小林さんが自ら提案したというシーンがあって、そこは普通に考えると「え?」と思うような振る舞いなのですが、それがショートフィルムならではのフックにもなっていて素晴らしいと感じました。小林さんの役者としての特性を活かした作品であると同時に、横浜の街を舞台に神話的な世界観を描いた作品だと思います。

――「CINEMA FIGHTERS project」の名の通り、それぞれの作品が切磋琢磨している印象を受けました。このプロジェクトに参加して、お二人にはどんな変化がありましたか?

佐藤:より歌詞を意識しながら曲を聴くようになりました。一つの歌を映像作品にする経験をしたことで、その向こう側にどんな世界が広がっているのか、具体的に想像するようになったのは、役者としてもパフォーマーとしても大きな収穫だと思います。

井上:歌詞を映画にするという企画性の強いプロジェクトでしたが、そのことによって創作性が失われるということはなく、むしろ想像力を駆使することができたのは、私にとっても発見でした。素晴らしい演技を披露してくれた大樹くんとの出会いにも感謝したいです。今作の経験を活かして、今後はさらにセリフに頼らない映像表現を突き詰めてみたいです。

(取材・文=松田広宣/撮影=石川真魚)

■公開情報
『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』
TOHOシネマズ 日本橋ほか全国公開中

「Beautiful」 
出演:AKIRA(EXILE)、蓮佛美沙子
監督:三池崇史
主題歌:「Beautiful」 Crystal Kay

「海風」
出演:小林直己、秋山菜津子
監督:行定勲
主題歌:「海風」 Leola

「On The Way」
出演:今市隆二、パコ・ニコラス
監督:松永大司 
主題歌:「Church by the sea」 RYUJI IMAICHI

「GHOSTING」 
出演:佐野玲於、畑芽育
監督:洞内広樹
主題歌:「ラストラブ」 LISA

「魔女に焦がれて」
出演:佐藤大樹、久保田紗友
監督:井上博貴
主題歌:「ライラック」琉衣

エグゼクティブプロデューサー:EXILE HIRO
企画・プロデュース:別所哲也
コンセプトプロデューサー:小竹正人
製作:LDH JAPAN   
制作:パシフィックボイス
配給:LDH PICTURES
(c)2019 CINEMA FIGHTERS project

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<リアルサウンド映画部 公式Twitter>
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<応募締切>
11月26日(火)

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