『アナ雪2』、海外アニメ作品オープニング記録樹立 興収255億の前作に迫る上での死角は?

『アナ雪2』興収、前作に迫る上での死角は?

 もう一つ。これは同じメガヒット作品である新海誠監督の『君の名は。』から『天気の子』への流れでも見られた現象でもあるが、作品のヒットを大いに後押しした主題歌及び挿入歌が、前作の時ほど現象化していないということ。これも、インパクトという点で前作(言うまでもなく、『君の名は。』と『天気の子』はシリーズ作品ではないが)を超えることはそもそも難しく、そのイメージを踏襲した上でどこまでフレッシュな作品と音楽との相乗効果を生み出すことができるかというのが後発の作品の宿命なわけだが、特に『アナと雪の女王』と「レット・イット・ゴー~ありのままで~」の組み合わせはあまりにも強烈だっただけに(原題とはまったく異なる作品の邦題、楽曲の日本語サブタイトルも秀逸だった)、楽曲を中心とする社会現象化の再現というのはほとんど不可能なのではないか。実際、今のところCDの売り上げや配信の再生回数のチャートでも、前作ほどの大ヒットになりそうな兆しはない。

 以上をふまえて『アナと雪の女王2』の興収を予想するなら、興収約255億円という大記録を打ち立てた『アナと雪の女王』に肉薄するところまでは及ばず、150億円〜170億円程度に落ち着くのではないだろうか。それでも、『アラジン』(累計約121億円)、『天気の子』(累計約140億円。現在も公開中)を超えて、本年度のナンバーワン作品になる可能性は濃厚だ。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『アナと雪の女王2』
全国公開中
監督:クリス・バック、ジェニファー・リー
声の出演:クリステン・ベル、イディナ・メンゼル
日本語吹替版:松たか子(エルサ)、神田沙也加(アナ)、武内駿輔(オラフ)、原慎一郎(クリストフ)
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2019 Disney. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/anayuki2.html

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