熱くて優しいスポ魂映画の快作! 『ファイティング・ファミリー』ロック様が提言する「プロレス」の魅力

ロック様が映画で提言する「プロレス」の魅力

 ペイジがぶつかるのは、こうしたプロレスラーとしての壁だ。ペイジはずっと家族プロレスでスターとして活躍してきた。両親に仕込まれたレスリング技術も高く、ある意味で既に“プロ”なのである。そんな彼女が一緒に競い合うことになるのは、いかにも陽気でアメリカンなモデル出身の美女たちだ。曇り空のイギリスからやってきた武闘派のペイジとは、まさに真逆の存在である。実際、彼女らのレスリングの技術は低く(しかしマイクパフォーマンスは上手い)、ペイジは彼女らに強い反発心を抱き、強烈な孤独を抱えてしまう。しかし……この先の展開は、映画を実際に観てもらうのがいいだろう。この作品は「プロレス」を題材にすることで、「女の敵は女」なる巷に溢れる言説を陳腐なものと一蹴してみせる。この部分は非常に痛快だ。本作は「家族」のドラマが主軸にあるが、個人的には、こうしたレスラー同士の関係性も非常に魅力的だったように思う。

 夢の世界で活躍するためには、血と汗と涙を流す必要がある。そして努力が報われるとも限らない。本作は厳しい現実を描く一方で、「夢」という言葉の持つパワーと、「夢」を叶えるため奮闘する人々を優しい眼差しで見つめている。熱くて優しいスポ魂映画の快作だ。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■公開情報
『ファイティング・ファミリー』
11月29日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
監督・脚本:スティーヴン・マーチャント
出演:フローレンス・ピュー、レナ・へディ、ニック・フロスト、ジャック・ロウデン、ヴィンス・ヴォーン、ドウェイン・ジョンソン
配給:パルコ ユニバーサル映画
原題:Fighting with My Family/2019年/アメリカ/英語/108分/シネスコープ/5.1ch
(c)2019 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC., WWE STUDIOS FINANCE CORP. AND FILM4, A DIVISION OF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://fighting-family.com

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