吉沢亮、吉岡里帆、東出昌大らが魅せる演技の妙味 “一人二役”は、役者に課された挑戦状?

“一人二役”は、役者に課された挑戦状?

 吉沢と同じく『空の青さを知る人よ』にて、18歳から31歳の女性への成長を微細な変化で表現した吉岡里帆は、今年『パラレルワールド・ラブストーリー』でも一人二役を好演。前者では吉沢と並んで、声優としての吉岡の存在を感じたし、男女の三角関係が描かれる後者では物語のキーパーソンとして、主人公と観客とを目眩のするような世界に誘う役割を担った。

『パラレルワールド・ラブストーリー』(c)2019「パラレルワールド・ラブストーリー」製作委員会 (c)東野圭吾/講談社

 東出昌大は昨年公開の『寝ても覚めても』で、一人の女性の心を揺さぶる二人の男性を演じ分けた。性質が真逆にありながらも瓜二つの人物を、一方は地に足のついた人間味溢れる人物として、もう一方はミステリアスで浮世離れした存在感を放ち体現した。まだ演技経験が少ないながらもヒロインを演じ上げた唐田えりかのポテンシャルを引き出したのは、監督である濱口竜介の手腕もさることながら、相手役の東出の功績も大きかったはずである。

『寝ても覚めても』(c)2018 映画『寝ても覚めても』製作委員会/COMME DES CINEMAS

 そして、文字通り“演じる”ということを深く追求した『累 -かさね-』(2018)でダブル主演を務めた土屋太鳳と芳根京子のコンビは、変わり種の一人二役を演じた。容姿端麗な女優でありながら、その演技力に伸び悩む者に土屋が、自身の容姿に並々ならぬコンプレックスを抱えながら、天才的な演技力を持つ者に芳根が扮し、それらが“口づけによって入れ代わる”という高難度の設定をクリア。一つの作品内で二人もの俳優が一人二役を演じることとあって、非常にスリリングであった。やがて彼女たちそれぞれの尊厳をかけた熾烈な戦いが展開。土屋、芳根、この両者の力が拮抗しているからこそ実現できたものであったのだろう。

『累‐かさね‐』(c)2018映画「累」製作委員会 (c)松浦だるま/講談社

 役を演じることにおいて、その技術力の水準がどれくらいであるのかが顕著にあらわれる“一人二役”。これは個々の俳優にとって、ある種の挑戦状ともなっているのではないのだろうか。今後は、岩井俊二監督最新作『ラストレター』にて、広瀬すず、森七菜らの一人二役がお披露目となる。俳優たちそれぞれの持つ演技の妙味を、存分に堪能したい。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter

■公開情報
『空の青さを知る人よ』
全国公開中
声の出演:吉沢亮、吉岡里帆、若山詩音、落合福嗣、大地葉、種崎敦美、松平健
監督:長井龍雪
脚本:岡田麿里
キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀
主題歌:あいみょん(unBORDE/Warner Music Japan)
(c)2019 SORAAO PROJECT
公式サイト:https://soraaoproject.jp/

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