キューブリックからなぜ離れられなかったのか? 元専属ドライバーが明かす、2人の関係性

キューブリックの元専属ドライバーが語る

「仕事仲間でもあり、友人でもあり、家族でもあった」

ーーアレックス・インファセッリ監督から今回の映画の話がきた時は、どのようなことを話しましたか?

ダレッサンドロ:アレックスとは事前にしっかりと話し合いをしました。出演するにあたっての条件のようなものです。それは、スタンリーの映画の制作の裏側に関することはあまり言えないし、暴露のようなことはしたくないということ。どこまでやっていいか、どこからやってはいけないのかという線引きのようなものです。あらかじめ話せないことなどはしっかりと決めておいて、一定の枠の中で映画を作るというのが私からのリクエストでした。アレックスもそれには最初から納得してくれていましたし、完成した映画もしっかりとその枠の中に収まるものでした。アレックスは、その限られた枠の中でもベストなもの作ってくれたと思っています。

ーー改めて、あなたにとってスタンリー・キューブリックとは、どのような存在だったのでしょう?

ダレッサンドロ:仕事仲間でもあり、友人でもあり、家族でもある。まさにその全てだと思います。スタンリーとは家族ぐるみの付き合いでしたし、彼は私たちに住む場所も提供してくれました。なので、お互い家族として受け入れないと、このような関係性は築けなかったと思います。僕は本当に彼のことを尊敬していましたし、彼の望みに対して全て応えたいと思っていました。それには、お互いの妻の理解も必要でしたから。『アイズ ワイド ショット』の撮影に入る前、私はスタンリーの元を離れ、家族と一緒に時間を過ごしていました。なので、スタンリーには撮影の準備が完全にできたら呼んでくれと言っていたのです。その時も、妻はしっかりと私の行動を理解してくれていました。あの時は、また離れて戻って……ということが続いていくと思っていましたが、彼は突然亡くなってしまった。その時の気持ちはなんとも言えず、ただただ悲しかった。最後に戻れたことは、本当によかったと思っています。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『キューブリックに愛された男』
ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開中
監督:アレックス・インファセッリ
出演:エミリオ・ダレッサンドロ、ジャネット・ウールモア、クライヴ・リシュ
配給:オープンセサミ
配給協力:コピアポア・フィルム
2016年/イタリア/カラー/82分/ビスタサイズ/5.1ch
(c)2016 Kinetica-Lock and Valentine
公式サイト:http://kubrick2019.com/

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