“週5日放送”がもたらす朝ドラの変化 脚本家にとってはプラスの側面の方が大きい?

朝ドラ“週5日放送”で何が起きる?

 逆に生活に根ざした日々の営みを淡々と描いてくようなホームドラマ的な作りとは、とても相性がいい。朝ドラが生活習慣に根ざした時計のような役割を果たしていると言われているが、これはドラマの中で流れる日常のリズムが、視聴者の生活リズムとうまく合致しているからだろう。その意味で週休2日が定着しつつある今の日本においては土曜日を削るというのは戦略的に正しいのかもしれない。

 ただ、どんなに名作と言われる作品でも、物語が後半になるほど中だるみしているなぁと感じる。特に女の一代記的な作品の場合、ヒロインが高齢化するに伴って主人公の肉親が、老衰で次々と亡くなっていくという葬式ラッシュになってしまう。そういう場面に出くわすと、脚本家が苦労しているなぁと同情してしまう。

 『ちゅらさん』『おひさま』『ひよっこ』と過去に三本の朝ドラを執筆した岡田惠和の作家性が朝ドラと相性が良いのは、ストーリーが停滞するダレ場となるような終盤の展開を、面白く見せることができるからだろう。それは宮藤官九郎の『あまちゃん』も同様だ。ストーリーよりも会話劇を通して複数のキャラクターを延々と見せていくことを楽しめる作家なら、どんなに話数が多くても問題はないのだが、この二人はあくまで例外的存在である。

 だから、多くの脚本家にとっては、終盤の中だるみ感を解消できるプラスの側面の方が大きいと言えるだろう。その意味で筆者は肯定的に受け止めている。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
2020年度前期連続テレビ小説『エール』
放送予定:2020年春〜
出演:二階堂ふみ、窪田正孝、唐沢寿明、菊池桃子、佐久本宝、風間杜夫、山崎育三郎、中村蒼、森山直太朗、薬師丸ひろ子、光石研、松井玲奈、森七菜、古川雄大、平田満ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか

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