波瑠、中川大志、松下由樹のリラックスした空気感 『G線上のあなたと私』仕事と恋愛以外の幸せ

『G線上のあなたと私』仕事と恋愛以外の幸せ

 「私、明日から、どう息をすればいいかもわからないほど、わたしにはもう、何もない」。也映子は、仕事と恋愛を一度に失うことで、生きる目的さえわからなくなってしまった。それだけ私たちの人生において、この2つの要素が占める割合が大きいのだと気づかされる。仕事と恋愛が充実していない=幸せではない。そう判断されてしまう時代が長く続いてきたからだろうか。

 だが、私たちは仕事でのステイタスや恋愛結婚以外にも、幸せを感じる瞬間があるのを知っている。それは「酔狂」と言われるくらい、好きなことに没頭できる時間。音楽、アート、グルメ、スポーツ、ゲーム、エンタメ……仕事や恋愛、結婚と違って、どれも生活に直結しているわけではない。

 しかしだからこそ、現実生活と少しだけ距離と取る大事な時間になる。いわば、仕事や恋愛に絶望したとき、すぐに溺れないための心のセーフティーネット。そこに、また新たな友情という繋がりができれば、より広い視野を保つことができる。

 「そんなに夢中になって何になるの?」と、ときには揶揄されてしまうこともあるかもしれない。そうやってからかう人は、きっとどこかで羨ましいのだ。自分にはない居場所(心のよりどころ)を見つけた人が。

 その感覚は、理人の恋愛をネタに盛り上がってしまった也映子と幸恵にも通じるものがある。10代のような勢い任せの恋愛をすることは、もう自分にはないだろうという少しの寂しさと、恥ずかしくなるほどの若さに人生の先輩として一言いってやりたくなる歯がゆさ。
そして「嫁が平日の夜にバイオリンを習い始めたと思ったら、お酒を飲んで帰ってくる」と、幸恵の姑が井戸端会議のネタにしているのも、また然り。自分が新たな場所に繰り出す勇気はない人ほど、皮肉っぽくなっていく。

 また、からかってくるのは他者だけではない。ときには自分自身の中から聞こえてくることも。「夢中になっても意味ない」「やるだけ無駄」などと、一歩踏み出す前に諦めさせようとする、もう1人の自分が出てくることもある。

 「やめなさい。2人とも! お互い、照れ隠しなのはわかってます」。そうした声が聞こえてきたときは幸恵が放った、この喝を思い出したい。「好き」「始めたい」「できるようになりたい」という自分の中に生まれたポジティブな感情は、あまりにピュアでまるで青春のように甘酸っぱい。それゆえに、大人になるほど恥ずかしく感じてしまうけれど、照れたりしなくていいのだ。

 そして、このドラマを「好き」になり、今シーズン「見たい」と思ったことも、また新たな青春の始まり。今はネットですぐに仲間も見つかる時代だ。偶然「好き」が重なった人と繋がって、思う存分この青春を謳歌してほしい。

(文=佐藤結衣)

■放送情報
火曜ドラマ『G線上のあなたと私』
TBS系にて、10月15日スタート 毎週火曜22:00~22:57 
出演者:波瑠、中川大志、松下由樹、桜井ユキ、鈴木伸之、滝沢カレンほか
原作:いくえみ綾『G線上のあなたと私』コミックス全4巻(集英社マーガレットコミックス刊)
脚本:安達奈緒子
演出:金子文紀、竹村謙太郎、福田亮介
チーフプロデューサー:磯山晶
プロデューサー:佐藤敦司
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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