『ジョーカー』旋風で吹き飛んだ『ジョン・ウィック』 敗因はパキスタンよりも遅い日本公開?

『ジョン・ウィック』敗因は遅い日本公開?

 『ジョン・ウィック:パラベラム』の公開日は、香港、台湾、インドネシア、フィリピンなどのアジア各国ではアメリカよりも早い5月15日、ヨーロッパや南米各国でもその翌週にはほぼすべての国で公開。日本以外で最も公開の遅かったパキスタンでも、7月5日には公開されている。日本公開は実に、それより3ヶ月も遅かったことになる。通例、世界同時公開や本国同時公開が行われるのはワーナー、ディズニー、ソニー、フォックス、ユニバーサル(東宝東和)、パラマウント(東和ピクチャーズ)など日本にも直属の配給会社があるメジャー作品のみ。『ジョン・ウィック:パラベラム』のライオンズゲートはアメリカではハリウッドメジャーの一つだが、日本ではポニーキャニオンやKADOKAWAなど作品ごとに配給をおこなう会社が異なる。その際、配給業務のスタート時点で既に日本国内の邦画メジャーと洋画メジャーの自社作品に劇場が押さえられていて、作品の規模にふさわしいスクリーン数を確保しようとすると、公開日が先送りになってしまうことが多々あるのだ。

 10年以上前ならまだしも、観客の多くがネットで日常的に映画の情報に触れていて、ストリーミングサービスでも海外とタイムラグなしに充実した海外作品を楽しむようになってきた現在、『ジョン・ウィック:パラベラム』のような世界中で大ヒットしているシリーズ作品の新作が、本国から5ヶ月も遅れて公開されるというのはなかなか厳しい。ライオンズゲート作品では、過去にも世界中で現象を巻き起こした『ハンガー・ゲーム』シリーズが、第1作の公開が半年以上遅れた日本でまったく鳴かず飛ばずだったという苦い歴史があった。やはり、東ティモールでも5月に公開されている作品が、日本で10月公開になるというのは何かが間違っている。日本の映画興行界が構造として抱えている問題であることは理解しているが、そろそろそこにメスを入れるべき時期がきているのではないだろうか?

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『ジョン・ウィック:パラベラム』
全国公開中
監督:チャド・スタエルスキ
出演:キアヌ・リーブス、ハル・ベリー、イアン・マクシェーン、ローレンス・フィッシュバーン、マーク・ダカスコス、アンジェリカ・ヒューストン
配給:ポニーキャニオン
2019年/アメリカ/R15/原題:John Wick: Chapter 3 – Parabellum
(R), TM & (c)2019 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.
公式サイト:http://johnwick.jp/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「興行成績一刀両断」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる