トップ3は東宝が占有、『人間失格』は4位に再浮上 蜷川実花作品の人気定着ぶりに注目

蜷川実花作品の人気定着ぶりに注目

 以上、上位3作品はすべて東宝配給作品。今年の夏休み興行は絶好調の『天気の子』に隠れるかたちで、『アルキメデスの大戦』や『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』が期待されていたほどの成績には届かず、公開作品の明暗がはっきりと分かれていたが、秋に入ってから(今週も7位につけている)『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』のロングヒット化、『記憶にございません!』と『かぐや様は告らせたい』のスマッシュヒットと、底力を見せつけている。順番にテレビドラマの映画化、フジテレビ肝いりの三谷幸喜映画、もはや伝統芸能とも言える典型的なティーンムービーと、作品の座組自体に新しさがまったくないところが気にはなるが。

 最後に、前週5位から4位に再浮上した蜷川実花監督『人間失格 太宰治と3人の女たち』について触れたい。日曜までの公開から17日間の成績は、ウィークデイも女性の観客層を中心に安定した興行を続けて、動員69万3000人、興収9億3600万円という数字。累計興収12億円を突破している今年7月公開の『Diner ダイナー』に続いて2作連続で10億円突破が確実となった。ヒットメイカーであることはもちろん大きな価値だが、映画監督としての仕事を続けていく上でそれ以上に重要なのは「コケない」監督であること。興収21.5億円を記録した2012年の『ヘルタースケルター』を筆頭に、蜷川実花は作家性の強い作品を撮り続けながら、ここまで「コケない」監督であり続けている。『Diner』は3位止まり、『人間失格』は4位止まりと、強力な上位作品に阻まれて動員ランキングではそこまでの存在感を示してはこなかったが、短い間隔で公開された、それぞれかなり作風の異なる、非「東宝配給」(『Diner』はワーナー配給、『人間失格』は松竹とアスミック・エースの共同配給)の実写作品で、いずれも10億円突破というのは、実は影の快挙と言っていいだろう。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『人間失格 太宰治と3人の女たち』
全国公開中
監督:蜷川実花
出演:小栗旬、宮沢りえ、沢尻エリカ、二階堂ふみ、成田凌、千葉雄大、瀬戸康史、高良健吾、藤原竜也
脚本:早船歌江子 
音楽:三宅純
製作:『人間失格』製作委員会
企画:松竹
配給:松竹、アスミック・エース
(c)2019 『人間失格』製作委員会
公式サイト:http://ningenshikkaku-movie.com/
公式Twitter:@NSmovie2019

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