斎藤工が放つ眼光の鋭さ 『火村英生の推理 2019』は名作ミステリーを現代版にアップデート

『火村英生の推理 2019』斎藤工の強い眼光

 また、自らのうちに殺人衝動を抱えた火村をはじめ、犯罪を起こす側と被害者の視点が交錯しているのが『火村英生の推理』であり、『ABCキラー』というタイトルは視点の転換を含意している。しかし、「あんたは小説の中の主人公ちゃう」とアリスが犯人に叫んだように、犯罪者は小説の主人公になることはできても、現実世界で主人公になることはない。火村の諸星に対する半ばシンパシー、半ば同族嫌悪にも近い感情は、自身の闇を見つめ、犯罪衝動を持ちながらも、犯罪者側には身を置かないという主人公の意志でもあるのだ。

 放送では、Huluオリジナルストーリー『狩人の悪夢』の劇中で登場するホラー小説『ナイトメアライジング』について言及する場面があり、連続ドラマの最終話『ロジカル・デスゲーム』で火村が諸星に囁いたセリフが明かされるなど、意識的に各エピソード間の連結が図られているのもファンにはうれしいところだ。

 事件の黒幕に向かって「オレは卑怯な狩りはしない」と言い放つ火村。その眼には強い光が宿る。今回の放送は本格的な復活への序章となるのか。セカンドシーズンへの期待を抱かせるラストシーンだった。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログtwitter

■放送情報
『臨床犯罪学者 火村英生の推理 2019』
配信:地上波放送終了後、Huluにて配信
原作: 有栖川有栖『火村英生』シリーズ(KADOKAWA、講談社、光文社、新潮社、文藝春秋、徳間書店、幻冬舎)
脚本:マギー
脚本協力:佐藤友治
音楽:井筒昭雄
チーフプロデューサー:池田健司
企画プロデュース:戸田一也
プロデューサー:小泉守(トータルメディアコミュニケーション)
演出:長沼誠
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
制作:HJホールディングス
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式Instagram:https://www.instagram.com/himura_ntv/

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