『なつぞら』広瀬すず、草刈正雄ら“全ての開拓者”たちに乾杯! 第1回とリンクした見事な最終回

『なつぞら』第1回とリンクした見事な最終回

 また、最終回は、第1回とリンクする場面が多くあった。まず、『大草原の少女ソラ』の中でも風の丘として登場した十勝の丘は、なつと坂場と優が手を繋ぎ未来を見据える最後の場面でもあり、第1回のなつがスケッチをする始まりの場面でもあった。

 第1回が昭和30年8月、最終回が昭和50年8月とちょうど20年の歳月を経て、なつは家族を連れて風の丘に戻ってきたことになる。さらに、最終回ではエピローグとしてマコプロが今後携わるアニメーションが示唆されるシーンがある。それが、麻子(貫地谷しほり)が次の企画の資料として手に持つ『CUORE』と書かれた本と、坂場がなつに夢として話す奥原兄妹の経験した戦争を描いた映画。ナレーションによって、12年後になつたちがその戦争映画を完成させることが明かされるが、その直後に流れるアニメーションは、第1回でなつが戦争孤児であったことを説明するアニメーションとして流れていたものだ。

 『CUORE』は『母をたずねて三千里』、12年後に描かれる戦争映画は『火垂るの墓』。『なつぞら』は、朝ドラ100作目として、全編アニメーションのタイトルバックや過去の朝ドラヒロインが結集したりと、挑戦的な朝ドラという側面もあった。ちょうど折り返し地点での千遥の登場、「なつぞら最終回」がトレンドになったなつと坂場の結婚式が描かれた第114回と、製作陣の作品への強い思いやユーモア溢れる遊び心が随所に滲み出ていたが、その最たる演出が今回の第1回と最終回のリンクだったのではないだろうか。『なつぞら』製作陣に向けて、「全ての開拓者に乾杯!」と拍手を贈りたいくらいだ。

 言うまでもなく、「なつよ、『朝ドラ』よ、101作目に続けよ」と締めくくられたナレーションも粋な遊び心の一つ。そんな開拓者たちの魂は、朝ドラ101作目『スカーレット』にもきっと生きていくに違いない。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■作品情報
連続テレビ小説『なつぞら』
全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人/岡田将生、吉沢亮/安田顕、音尾琢真/小林綾子、高畑淳子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

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