『今日俺』『3A』『あな番』日テレ22時半枠好調のカギは? 『金田一』から続く最大の武器

『金田一』から続く日テレドラマの武器

 そんな中、転機となったのは2018年10月クールに作られた『今日から俺は!!』だろう。福田雄一が脚本とチーフ演出を担当した本作は、80年代カルチャーの懐かしさを全面に押し出したコメディテイストの学園ドラマに仕上がっていた。作品のテイストは福田雄一が『勇者ヨシヒコ』(テレビ東京系)シリーズ等で展開してきた深夜ドラマの方法論の延長だったが、地上波のプライムタイムで展開したことで、かつて、とんねるずやウッチャンナンチャンが展開していたようなパロディテイストのコント・バラエティが持っていたメジャー感を獲得し、80年代の風俗を懐かしむ大人世代だけでなく、10~20代の若者層まで幅広くリーチする作品となったのだ。

 とは言え、本作は福田だからこそできたワン&オンリーの作品であり、他の作り手が本作を真似することは難しいだろう。

『金田一』から続く日テレ・ドラマ最大の武器

 その意味でも、今後、日曜ドラマのスタイルを作っていくのは『3年A組』の成功かもしれない。異色の学園ミステリーとしてスタートした本作は、一話ごとに話のテイストが変わっていき、先の読めない展開が話題となった。学園ドラマとミステリーという組み合わせは、それこそ『金田一』の頃から脈々と続いている土9ドラマを発展させたものだったが、何より現代的だったのは、本作が最終的に描いたのが「SNS批判」だったことだ。

 犯人探しのゲームによってSNSの関心を引張りながら、最後の最後にSNSに蔓延する無責任な言動を批判する本作のスタンスは、快楽を与えながら同時に批判するという意味においてマッチポンプ的だったが、今の若者がもっとも関心のあるSNSをターゲットにすることで、普段はドラマを見ないような10代の中高生に響く作品となったことは間違いないだろう。

 そして、次の『あなたの番です』は、『3年A組』が切り開いたSNSに対応したミステリードラマというフォーマットを2クール(半年)に渡って展開し、犯人探しゲームの快楽によって、視聴者の関心を極限まで引っ張ることに成功した。

 『あなたの番です』には秋元康の名前が企画・原案としてクレジットされているが、やはりキーワードは「企画」だろう。

 何が起きるかわからないバラエティ番組的な犯人探しのゲームを支える企画力。これこそが『金田一』から続く日テレ・ドラマ最大の武器である。

 次クールの『ニッポンノワール ー刑事Yの反乱ー』は、『3年A組』と同じ世界観の作品だという。どのような企画が仕掛けられているのか、今から楽しみである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『ニッポンノワール ー刑事Yの反乱ー』
日本テレビ系にて、10月13日(日)スタート 毎週日曜22:30~放送
出演:賀来賢人、広末涼子、井浦新、夏帆、工藤阿須加、高橋ひかる、立花恵理、田野井健、栄信、細田善彦、篠井英介、北村一輝
脚本:武藤将吾
チーフプロデューサー:西憲彦
プロデューサー:福井雄太 、柳内久仁子(AX-ON)
演出:猪股隆一
制作協力 : AX-ON
製作著作 : 日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/NNY/

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