『記憶にございません!』、大ヒットスタート ターゲットはバブル世代!?

『記憶にございません!』ターゲットは?

 興味深いのは、本サイトもデータ提供を受けている興行通信社が「50代以上を中心に幅広い層を集客しており、腰の強い興行が期待される」(http://www.kogyotsushin.com/archives/topics/t8/201909/17171800.php)としていること。90年代から三谷幸喜脚本のドラマに親しんできた世代からすると、三谷幸喜作品に「年配の観客向け」というイメージはないのだが、そんな自分も気がつけば50代目前。観客の年齢層の上昇もごく自然の流れとも言える。まるで地球上でお台場だけ90年代が続いているかのようなフジテレビのお祭り騒ぎ的な作品のプロモーションも、バブル世代とされるその層にとってはまだ一定の効果があるのだろう(自分は民放局の成り立ち及びその社会的役割からは逸脱していると考えているが)。

 三谷幸喜監督と主演の中井貴一は現在58歳の同学年。彼らと同世代の観客に支持されている『記憶にございません!』の成功をふまえると、前作『ギャラクシー街道』は宇宙を舞台にしたコメディという題材が受け入れられなかっただけでなく、そもそもの想定ターゲットが三谷幸喜作品の観客の中心となる年齢層とズレていたことも大きかったのではないだろうか。今後も「数年後のシニア層」の興味やテイストと寄り添う限り、「三谷幸喜作品は安泰」ということかもしれない。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『記憶にございません!』
全国公開中
監督・脚本:三谷幸喜
出演:中井貴一、ディーン・フジオカ、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市、小池栄子、斉藤由貴、木村佳乃、吉田羊、山口崇、田中圭、梶原善、寺島進、藤本隆宏、迫田孝也、ROLLY、後藤淳平(ジャルジャル)、宮澤エマ、濱田龍臣、有働由美子
製作:フジテレビ、東宝
制作プロダクション:シネバザール
配給:東宝
(c)2019 フジテレビ 東宝
公式サイト:https://kiokunashi-movie.jp/

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