「支援がなければ、実現できなかった」 朝ドラ100作目『なつぞら』を支えた北海道・十勝の協力

朝ドラ100作目を支えた十勝の協力

 一方で、制作統括の磯智明氏も、『なつぞら』に関して「地元・十勝の協力がなければ、なにもできませんでした」と語っている。

「酪農をドラマで扱うのはとても難しく、今まで朝ドラで取り上げたことはありませんでした。牛はこちらの都合で動いてくれないですし、とてもデリケートです。安全管理や衛生管理もとても厳しく、神経を使います。出演者スタッフはいつも念入りに消毒してから牛との撮影に臨みました。ちなみに今の牛には耳に黄色い管理タグがついていますが、それはCGで消しています。牛を10〜20頭必要なシーンもあり、1つの牧場だけで揃えていただくのは難しく、農協を通じて複数の牧場にお借りすることもありました。十勝のように規模があり、牧場のネットワークが発達している地域の全面的な支援がなければ、このドラマは実現できなかったと思います。それと十勝は歴史を大切にされているためか、昔の農機具や生活用品がとてもきれいに保存されているので、当時の生活を再現するのにとても役立ちました」

『なつぞら』第13話(写真提供=NHK)

 撮影のために十勝に建てられた登場人物たちの住まいのセットは、帯広観光コンベンション協会や地元自治体に無償譲渡され、現在一般公開されている。それほど十勝からの協力を得て本作が作られ、地域に還元しようとしている姿勢が伝わってくる。

 松田氏は、『なつぞら』の十勝での反響について次のように語っている。

「今は天陽くん(吉沢亮)の家が真鍋庭園で無料で見られるようになっていて、アトリエにしていた馬小屋には、描いた絵を展示しています。新得町や陸別町にも譲渡してもらったセットが展示されていて、サイロや柴田家の道、看板、橋、牛舎なども見られるようになって、観光客も多く訪れています。小道具一つにしてもたくさんの数を譲渡していただいており、『なつぞら』の放送が終わっても、十勝で残していきたいと考えています。『なつぞら』を通じてたくさんの人に十勝を知ってもらえたので、これからもこの土地で大事にしていきたいです」

一般公開中の天陽のアトリエ

 十勝での最終ロケが行われた際、広瀬すずも草刈正雄も、北海道での撮影に特別な思いを抱き、また地元の協力に関して感謝の言葉を語っていた(参考:『なつぞら』北海道・十勝での最終ロケを実施)。ラストシーンにどんな結末が待っているのか。いよいよ半年間の放送が幕を閉じようとしている。

(取材・文=大和田茉椰)

参考:連続テレビ小説『なつぞら』ロケセット公開&ロケセットめぐりマップ

■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人/岡田将生、吉沢亮、清原翔/安田顕、音尾琢真/小林綾子、高畑淳子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる