重岡大毅の笑顔から滲み出る、演じることへの楽しさ 「いいひと系」の男の子の役柄に説得力

重岡大毅、「いいひと系」の役柄に説得力

 山田太陽を演じる重岡大毅はジャニーズWESTに所属するアイドルで、近年は俳優としても注目されている。出世作となったのは山戸結希の映画『溺れるナイフ』。本作で重岡が演じたのはヒロインの夏芽(小松菜奈)の友人の大友勝利。ある事件をきっかけに恋人のコウ(菅田将暉)と別れ、心を閉ざしてしまった夏芽に優しく寄り添い付き合うことになる大友は、ザ・良い人という感じの好青年だ。最終的には夏芽に振られてしまう若干かわいそうな役割なのだが、コウを演じた菅田将暉の荒々しいカリスマ演技とは真逆の落ち着いたたたずまいを見せることで、二人(夏芽とコウ)の神話的な世界に入ることができない普通の人代表としてとても重要な役割を果たしていた。

『溺れるナイフ』本予告

 ジャニーズ・アイドル出身の俳優には何人かこういうタイプの男性がいる。華やかな王子様というよりは、気さくな笑顔が似合う親しみやすいお友達キャラで、同性からの好感度も非常に高い。

 そんな重岡の魅力がもっとも際立ったのは、Netflixで配信された学園ドラマ『宇宙を駆けるよだか』だ。

 本作は一種の入れ替わりモノの作品で、明るくて容姿端麗な小日向あゆみ(清原果耶)は、太っていて陰気なクラスメイト・海根然子(富田望生)がしかけた呪い(赤い月が出ている宇空の下で自殺する姿を見せる)によって、容姿と性格が入れ替わってしまう。

(c)川端志季/集英社 (c)「宇宙を駆けるよだか」製作委員会

 親にもクラスメイトにも恋人のしろちゃん(神山智洋)にも自分が海根と入れ替わったことを信じてもらえないあゆみ。しかし重岡が演じる火賀俊平だけは、海根(の内面)があゆみだと気づく。

 「どんな姿してても分かるよ、あゆみは……あゆみなんやから」と加賀が言う場面は、あゆみの絶望を、これでもかと描いていただけに、とても救われたような安堵感がある。そこには単純に演技が上手いとか下手といったレベルとは違う深い説得力があった。

 この作品も役割としては恋人ではなく友人役なので、恋の鞘当て的ないい人キャラだ。こういう、お友達系の男の子は、最終的には本命とは結ばれない運命にあるので、若干かわいそうな役割なのだが、重岡の屈託のない笑顔をみていると、きっと彼はそれでも幸せなのだろうと思わされる。

 多分、『溺れるナイフ』の大友くんも『宇宙を駆けるよだか』の火賀も、損得など考えず、ただ自分が好きな女の子が心配だから、傍に寄り添っているだけなのだ。『これは経費で落ちません!』の山田太陽にしても同様で、小学生みたいな森若とのもどかしい恋愛も、彼自身は楽しんでいるのではないか。彼らのような、いいひと系の男の子を、地に足のついたキャラクターとして説得力を持たせ、生き生きと楽しそうに演じられることが、重岡大毅の魅力ではないかと思う。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
ドラマ10『これは経費で落ちません!』
NHK総合にて、毎週(金)22:00〜22:49放送(連続10回)
出演:多部未華子、重岡大毅(ジャニーズWEST)、伊藤沙莉、桐山漣、松井愛莉、韓英恵
角田晃広、片瀬那奈、モロ師岡、平山浩行、吹越満ほか
原作:青木祐子
脚本:渡辺千穂、藤平久子、蛭田直美
音楽:安田寿之
主題歌:阿部真央
制作統括:管原浩(NHK)、坂下哲也(AX-ON)
演出:中島悟、松永洋一
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/drama10/keihi/

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