菅田将暉はなぜ重宝されるのか? 大作映画とミニシアター系映画、2つの活動で培われた演技力

なぜ、菅田将暉は重宝される?

 他方、『タロウのバカ』で演じるのは現代の高校生。これまでに、菅田が何度も演じてきた役どころである。本作で見せる“若者のリアル”とは、誰もが感じている、あるいは感じてきた、日常に対する倦怠感やイラ立ちのことだ。現状への不満や将来への不安から、そんなことを感じてしまうのは劇中の彼だけではないのではないか。奔放な若者たちの「暴力」や「暴走」が派手に描かれる作品ではあるが、誰もが一度は感じるであろう青春時代の鬱屈を、極端化して表現したものだと捉えることができる。突拍子もない物語展開と異常なキャラクター設定の中に、それらのリアルな要素を落とし込んでいる点が本作のある種の魅力であり、それを実現させてしまうのが菅田の俳優として優れたところなのである。

(c)2019 映画「タロウのバカ」製作委員会

 『アルキメデスの大戦』をはじめ、『帝一の國』(2017)、『銀魂』シリーズ(2017-2018)といった菅田が出演した“大作映画”を並べてみると、いずれもがマンガの実写化作品であり、その再現度の高さはもとより、先述したオーバーアクト気味な芝居で適応してきたことが分かる。だが一方で『タロウのバカ』のように、『あゝ、荒野』(2017)、『生きてるだけで、愛。』(2018)などの、いわゆるミニシアター系映画と呼ばれる作品にも菅田は必要とされている。こうやって各作品に合わせた彼の表現手法、立ち振舞の差異に目を向けてみることで、菅田将暉という俳優がなぜ重宝されるのか、その理由が自ずと分かってくるだろう。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter

■公開情報
『アルキメデスの大戦』
全国公開中
原作:三田紀房『アルキメデスの大戦』(講談社ヤングマガジン連載中)
監督・脚本・VFX:山崎貴
出演:菅田将暉、浜辺美波、柄本佑、笑福亭鶴瓶、小林克也、小日向文世、國村隼、橋爪功、田中泯、舘ひろし
配給:東宝
(c)2019映画「アルキメデスの大戦」製作委員会 (c)三田紀房/講談社
公式サイト:http://archimedes-movie.jp/

■公開情報
『タロウのバカ』
テアトル新宿ほか全国上映中
監督・脚本・編集:大森立嗣
出演:YOSHI、菅田将暉、仲野太賀、奥野瑛太、植田紗々、豊田エリー、國村隼
製作幹事:ハピネット、ハーベストフィルム
配給:東京テアトル
(c)2019 映画「タロウのバカ」製作委員会
公式サイト:www.taro-baka.jp

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