『セミオトコ』を成立させた山田涼介の「アイドル力」 7日間で見せる「一代記」的な演技の幅

 また、いつも自分の表現したいことが形にできないイライラを抱えている服飾系専門学校生・熊田美奈子(今田美桜)も、我が子を幼くして亡くした悲しみを抱える岩本夫婦(やついいちろう・しずちゃん)も、弟を失ってから外に出なくなった「うつせみ荘」大家のねじこ・くぎこ姉妹(阿川佐和子・檀ふみ)も、セミオの登場によって、これまで心の中に閉じ込めていた悲しみと正面から向き合うことができ、新たな一歩を踏み出すきっかけを得ている。

 極めつきは、一人部屋に閉じこもってヘッドフォンで音楽を聴いていた小川さん(北村有起哉)の存在だ。

 事あるごとに「俺で和むな。俺を愛すな」「尊敬するな、好きになるな、俺を」をまるで自意識過剰ギャグのように言い続け、うつせみ荘の住人達をクスリとさせていたが、実は自称「余命わずか」であるのは事実であり、そこから医師を辞め、誰かを悲しませたり自身が辛い思いをしたりしないように人との交流を断っていたことを明かす。

 そんな彼が、第6話の中で、セミオの「自分は本当にセミなんです」という荒唐無稽な告白に対し、「お前が言うなら信じるよ。みんなお前のことが好きだからな」と言い、それにみんなも頷いたのは、メインのラブストーリー以上に感動的なシーンだった。

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