『だから私は推しました』20代Pが語る、地下アイドルを描いた意図 「“推した”後に残るもの」

20代Pが語る『だから私は推しました』の裏側

“推した”ことによって得た何か

ーー愛を演じる桜井ユキさんは前クールのドラマ『東京独身男子』(テレビ朝日系)で演じていた弁護士役とは別人のようです。キャスティングはどんな経緯で?

高橋:完全オリジナル作品なので、登場人物たちの性格は非常に細かいところまで森下さんと詰めていきました。その後に、作り出したキャラクターに合う役者さんを見つけていきました。愛を演じた桜井さんに関しては、チーフ演出も是非お願いしたいと。桜井さんの出演作を観ていると、とにかく表情が豊かなんです。笑っていても、心の中では笑っていないんだろうなと思わせる表情をされていたり。愛も最初は自分の言いたいことが言えず内に溜め込んでしまう性格。それが最後にははっきりと言えるようになる。その変化を体現できるのは桜井さんしかいないと。あとはあんなに素敵な方なのに、どこか親近感も持ち合わせていて「本当にこんな人がいるんじゃないか」と思わせてくれる表現力が桜井さんにはあると思っていました。

サニーサイドアップMV『サイリウム・プラネット』~よるドラ「だから私は推しました」~

ーーそして、愛が沼に堕ちてしまうアイドル・サニーサイドアップのクオリティの高さにも驚きました。ここまでの作り込みは最初から決めていたのでしょうか。

高橋:やるからにはしっかり世界観を作りたいと思っていました「いろんな入口を用意したい」と先程も言いましたが、ヲタクである主人公により深く共感してもらうために、アイドル側も作り込みたかったんです。なので、楽曲を作り、ダンスも決めて、PVも撮って……と、本当にアイドルプロデュースをしていた感じですね。

ーー本作には監修として元・地下アイドルの姫乃たまさんが参加されています。サニーサイドアップの作り込みにも影響が?

高橋:姫乃さんには台本を作っていく過程でのリアリティなどをチェックしていただきました。フィクションなのでどうしてもドラマチックに展開させなくてはいけない。それをどうすればリアリティの延長として描けるか。姫乃さんはアイドルとして、自分が演者となることはもちろん、ファンにはどんな方がいるかもよく知っている。加えて、ライターとしても活動されている方なので、そういったアイドルの現場を客観的に見ることもできる。キャラ設定の段階から、こんな性格だとこの子は人気が出すぎてしまうとか(笑)、こんな行動を取ったらファンが離れてしまうとか、私たちでは理解しえないところまで深く教授していただきました。

 姫乃さんの意見は瓜田のキャラクター像を作る上でもすごく参考になりました。当初、瓜田像としてぽっちゃり気味で見た目にも気を遣っていない、“いかにも”なヲタク像をイメージしていたんです。でも、姫乃さんから「危ない部分を持ったファンの方は見た目自体は一般的なことが多いんです。見た目が普通であるからこそ、周りも危険に気づいてくれない。それがより怖いところなんです」と意見をいただきました。それは確かにそうだなと。そういった部分で、今回姫乃さんの力は非常に大きかったです。

ーー放送も残り2回となりました。最終回に向けての見どころを教えてください。

高橋:ミステリー部分が気になる方も多いと思うのですが、注目していただきたいポイントはやはり愛の表情です。第4回では副業を始めてまでサニーサイドアップにつぎ込むようになりました。愛の友人たちも指摘していましたが、世間から見れば「アイドルなんかと出会わなければよかったのに」と思うはずなんです。お金も時間も費やして、最後に何が残るんだと。でも、それでも愛の中には“推した”ことによって得た何かが確実にあるはず。愛は推しと出会ってどう変わったのか、愛自身はハナを推してきた日々をどう思っているのか、その点に注目していただけたらと思います。

(取材・文=石井達也)

■放送情報
よるドラ『だから私は推しました』
NHK総合にて、毎週土曜23:30〜23:59放送(全8回)
出演:桜井ユキ、白石聖、細田善彦、松田るか、笠原秀幸、田中珠里、松川星、天木じゅん、澤部佑、村杉蝉之介ほか
作:森下佳子
音楽:蔡忠浩(bonobos)
制作統括:三鬼一希
プロデューサー:高橋優香子
演出:保坂慶太、姜暎樹、渡邊良雄
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/doruota/

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