『ワンハリ』&『引っ越し大名!』 洋邦期待の新作を阻んだトップ4の壁

洋邦期待の新作を阻んだトップ4の壁

 この「都市部と地方の動員力の大きな差」というのは、メディアは盛り上がっているのに実際はそこまで数字が伸びない作品によくありがちな現象。必ずしも実写の外国映画が地方で弱いというわけではなく、『ワイルド・スピード』シリーズのようにむしろ郊外のシネコンでやたらと強い作品もある。逆に言えば、30億円、40億円と興行成績を積み上げることができる外国映画とそこまでは伸びない外国映画の違いは、そのまま「郊外」や「地方」での浸透度の差と言ってしまってもいいだろう。

 そのこと自体は世界各国の都市部と地方でどこでも起こっている現象だが、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のようなオリジナル作品やハリウッド大作でもシリーズ1作目の数字はあまり伸びず、シリーズ化されて作品を重ねるごとに成績が上がっていく傾向は特に日本において顕著だ。雑誌からネットメディアへと主要な映画の情報収集経路もシフトし、NetflixやAmazonビデオで日本のどこにいても最先端の海外作品にリアルタイムで触れられるようになっても、なかなかこの状況は変わらない。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』
全国公開中
監督:クエンティン・タランティーノ
出演:レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、ルーク・ペリー、アル・パチーノ、ブルース・ダーン、ダコタ・ファニング、ジェームズ・マースデン、ティム・ロス、マイケル・マドセン、カート・ラッセル、エミール・ハーシュ、ティモシー・オリファント、ダミアン・ルイス
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト:http://www.onceinhollywood.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/SPEeiga
公式Facebook:https://www.facebook.com/SPEeiga/

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