2019年の夏休み興行を総括 あの作品は勝ち組? 負け組?

2019年の夏休み興行を総括

 7月19日公開作は『天気の子』の一人勝ち。7月26日には『アルキメデスの大戦』と『ペット2』が公開。8月25日までに、前者は興収17億3400万円、後者は興収19億300万円。同日には『劇場版 仮面ライダージオウ/騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE』も300スクリーン以上で公開されたが、興収10億未満に終わっている。

 8月2日には『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』と『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』が公開。8月25日までに、前者は興収27億1600万円、後者は興収13億200万円。『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』はぎりぎり30億円の大台を狙えそうだが、『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は作品内容、興行ともにふるわなかった。8月7日公開作では『ライオン・キング』も『ONE PIECE STAMPEDE』も既に40億円突破。まだまだ上映も続くので、数字を伸ばしていくだろう。8月16日公開の『ダンスウィズミー』は初週10位スタートとかなり厳しい出足に終わった。先週末公開された『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』、『ロケットマン』、『二ノ国』はいずれも「夏休み映画」と呼べるほどのパフォーマンスを示すにはいたっていないので、ここでは除外する。

 総括すると、文句なしの大ヒットとなったのは『アラジン』『トイ・ストーリー4』『天気の子』『ライオン・キング』『ONE PIECE STAMPEDE』の5本。ギリギリ30億円前後に位置しているのが『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』の3本。以上の8作品は2019年の夏休み興行の「勝ち組」といえるだろう。内訳は外国映画5本(アニメ、及びCG作品2本)、日本映画3本(すべてアニメ、及びCG作品)。外国映画が好調な一方で、実写の日本映画は1作品もない。

 一方で、『Diner ダイナー』『アルキメデスの大戦』『ペット2』『劇場版 仮面ライダージオウ/騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE』『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』『ダンスウィズミー』は、少なくとも「夏休み映画」に求められる大ヒットの基準には達しなかった。絶好調の『天気の子』に隠れるかたちとなったが、特に両作とも東宝配給、山崎貴関連作という点で大ヒットが期待されていたはずの『アルキメデスの大戦』と『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』が、最終興収で20億円にも届きそうにないのは気になるところだ。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『天気の子』
全国東宝系にて公開中
声の出演:醍醐虎汰朗、森七菜、本田翼、吉柳咲良、平泉成、梶裕貴、倍賞千恵子、小栗旬
原作・脚本・監督:新海誠
音楽:RADWIMPS
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:田村篤
美術監督:滝口比呂志
(c)2019「天気の子」製作委員会
公式サイト:https://www.tenkinoko.com/

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