短所が長所で、長所が短所に!? 『ライオン・キング』“2次元の3次元化”への試行錯誤を読む

『ライオン・キング』2次元の3次元化を読む

 しかし、もしこの現実の動物そっくりに描くアプローチがなかったら、最初に挙げた冒頭のシーンのような感動はなかった。他にも肉食動物と草食動物が楽しく過ごしている姿や、ライオンのつがいがオアシスで戯れる光景、ライオン同士の肉弾戦など、現実で滅多にお目にかかれないシーンには、やはりオープニング同様のパワーがある。こうした映像体験は強烈な魅力だ。つまり短所が長所でもあり、長所が短所でもある。

 『ライオン・キング』は決して完璧な作品ではない。しかし、新鮮な映像体験と、特殊効果の凄さを体験できるのはたしかだ。あと何年か経ったあと、恐らく本作はMCUをはじめとしたアメコミ映画や『アリータ:バトル・エンジェル』(2019年)といった作品と並べて、2次元の3次元化への試行錯誤の1本として、ある道の到達点か、過渡期の重要作として語られることになるだろう。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■公開情報
『ライオン・キング』
全国公開中
監督:ジョン・ファヴロー
声の出演:ドナルド・グローヴァー、ビヨンセ
日本語吹替版:賀来賢人、門山葉子
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/lionking2019.html

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