スピンオフでも安定の大ヒット 『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』の真価

『ワイスピ/スーパーコンボ』の真価

 先週末の映画動員ランキングは、『天気の子』が土日2日間で動員50万5000人、興収7億1800万円をあげて3週連続1位に。公開から17日間の累計で動員433万6897人、興収59億846万6600円。公開3週目に入ってさすがに当初の勢いはなくなってきたが、それでも今年の夏休み興行において独走状態が続いていることには変わりはない。この先、東宝配給作品は8月23日公開の『劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』まで新作がないので、少なくともそれまではスクリーン数もキープしながら、8月中にも興収100億円突破をうかがう情勢だ。

 今回注目したいのは2位に初登場した『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』。土日2日間で動員33万1000人、興収5億400万円。初日から3日間の累計では動員47万6000人、興収7億1220万円。タイトルからはわかりづらいが(もちろん意図的なものだろう)、本作は『ワイルド・スピード』シリーズの正式な「続編」というよりは、ドウェイン・ジョンソン演じる元FBI捜査官ルーク・ホブスと、ジェイソン・ステイサム扮する元MI6エージェントのデッカード・ショウをメインロールに据えた「スピンオフ」的作品という位置付け。本国版のポスターでも「Fast & Furious presents: Hobbs & Shaw」と、スピンオフ作品であることを示す「presents」の文字が、まるで日本の週刊誌やスポーツ新聞が不確定情報を打つ時の見出しの「?」ように申し訳なさそうに小さく入っている。直近のシリーズ作品にして、初の興収40億円を突破した2017年4月公開の『ワイルド・スピード ICE BREAK』のオープニング3日間の興収は8億6585万円だったので、興収比でいうと今回は82%という数字。これを「低い」と見るか「高い」と見るか。自分は作品の内容を鑑みると「ずいぶん高いな」という認識だ。

 『ワイルド・スピード』シリーズの実質的なスピンオフ作品は今回の『スーパーコンボ』が初めてではない。シリーズ3作目『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』は、東京を舞台(北川景子、妻夫木聡、真木よう子らも出演)に、これまでのシリーズのキャラクターは本編には出演せず、本作初登場のハン(サム・カン)がその後シリーズに参入したことで時系列的にはシリーズ6作目『ワイルド・スピード EURO MISSION』とシリーズ7作目『ワイルド・スピード SKY MISSION』の間に(つじつま合わせ的に)位置することになったという、かなり大胆な設定の作品だった。同作は、公開当時の世界興行的にはシリーズの底を打つこととなったものの、日本の走り屋カルチャーを描いたこと(その際の描写の正確さはあまり問題ではない)で、今では世界中のクルマ好きから異常とも思えるような高い支持を集めている。

 一方、今回の『スーパーコンボ』は、ホブスとショウのキャラクター劇としての魅力と、絶え間のない肉弾戦と、スペクタル全開のクライマックスのアクションシーンが見所。同じ「スピンオフ」的作品とはいえ、あらゆる意味で『TOKYO DRIFT』とは真逆の作品だ。そもそも、ホブスが初登場したのはシリーズ5作目『MEGA MAX』、ショウが初登場したのはシリーズ6作目『EURO MISSION』、いずれもシリーズ的には新参者だ。そして最も重要なことは、それぞれアメリカとイギリスの捜査組織に所属していた彼らは、そもそも最初からまったく走り屋カルチャーとは関係がないこと。実際、今回の作品においても走り屋カルチャー的な描写はゼロで、改造車さえ出てこない。ショウの愛車としてマクラーレン720Sが登場して活躍するものの、あんなのは他のハリウッド映画にも出てくるただの市販スーパーカーだ。彼のガレージには1969年式のMG MGB GTといったビンテージカーもあったが、それも英国趣味の成金カーマニアである証拠でしかない。

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