絶好調続く『天気の子』 もはや避けることができない宮崎駿との比較

『天気の子』新海誠、宮崎駿との比較

 ある時期以降の宮崎駿作品がそうであるように、あるいは『天気の子』の劇中でも直接的、間接的に参照されている村上春樹(同じく海外でもその作品が広く支持されている)の小説がそうであるように、国民的コンテンツとなった作品に対する風当たりはいつの時代も強い。『天気の子』に関しても、(マスコミ試写が行われずに)公開されてから2週間が過ぎようとしている現在、批評家や新海誠ファンや一般的な映画ファンといった各方面からの賛否の評や意見が寄せられている。その中でも多くの人が指摘しているのは(そして新海誠監督自身も認めているのは)、『天気の子』は、『君の名は。』に寄せられた世間の声に対する「リアクション」という側面が大きい作品であることだ。世評に敏感であるということは、新海誠という作家及びその作品の長所の一つであり、これまでの日本のトップ・クリエイターにはあまり見られなかった特質かもしれない。そうした「ファンダムとの付き合い方」における現代性も含めて、やはり新海誠は今回の『天気の子』で名実ともに「大御所」となったと言えるのではないだろうか。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『天気の子』
全国東宝系にて公開中
声の出演:醍醐虎汰朗、森七菜、本田翼、吉柳咲良、平泉成、梶裕貴、倍賞千恵子、小栗旬
原作・脚本・監督:新海誠
音楽:RADWIMPS
キャラクターデザイン:田中将賀
作画監督:田村篤
美術監督:滝口比呂志
(c)2019「天気の子」製作委員会
公式サイト:https://www.tenkinoko.com/

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