吉沢亮が口にする優しい「なっちゃん!」をもう一度 『なつぞら』“天陽劇場”を振り返る

『なつぞら』“天陽劇場”を振り返る

 その後、妹・千遙(清原果耶)が十勝に現れたことを機に北海道に戻ったなつは、天陽の妻・靖枝(大原櫻子)と初対面を果たす。「天陽くん!」と声をかけようとした時、天陽の横には靖枝がいるという現実を突きつけられたなつ。天陽の結婚について理解はしているが、受け入れられない。そんな思いをなつ、そして視聴者の誰もが抱いた一幕だった。

 スッキリとした表情で靖枝との馴れ初めを語る天陽に反して、なつ(と筆者)の心はモヤモヤするばかり。なつに向ける温かな眼差しは変わらないのに、どこか大人びた表情や口調が、2人が離れ離れになった長い時間を物語っているようで寂しくて。

 だが天陽は天陽で、酪農を継ぐと決めたからには、早い段階での結婚は致し方ないことだった。キャンバスに描いたなつの絵を赤色で塗りつぶして涙するシーンには天陽の覚悟が詰まっており、その決意を無下にするわけにもいかない。けれども真っ赤なキャンバスは、結婚後も残されたまま。そこに封印した天陽の本心が垣間見えるようで、切なさを掻き立てた。

 先週放送された予告に「おかえり」というセリフと共にほんの一瞬、天陽が映っただけで「天陽くん」がTwitterでトレンド入りするなど、未だ“天陽人気”は衰えず。なつが「(坂場と)一緒に生きれたらいいなと思う」と話している以上、この期に及んでなつと天陽の恋愛成就は願わない。だが、たとえなつが誰と結ばれようと、互いを支える存在として、2人には変わらぬ“つながり”を見せてほしい。知的で、芯が通っていて、アツくて、温かくて、爽やかで、カッコいい天陽が口にする優しい「なっちゃん!」を、まだまだ聞かせてほしいのだ。

■nakamura omame
ライター。制作会社、WEBサイト編集部、専業主婦を経てフリーライターに。小学生男児2人の母。ママ向け&エンタメサイトを中心に執筆中。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、岡田将生、中川大志、染谷将太、川島明、小手伸也、渡辺麻友、山田裕貴、福地桃子、田村健太郎、須藤蓮、藤本沙紀、井浦新、貫地谷しほり、山口智子ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

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