『ストレンジャー・シングス』『13の理由』の喫煙・自殺シーン規制に賛否 Netflixはどう変わるか

Netflix二大看板作品の表現規制に賛否

 もっとも同番組では、冒頭でイジメに遭ったときや、あるいはイジメられている人を見たときに、出演者がどう対応すべきか、その重要性をずっと語ってきていた。事実、「この『13の理由』のおかげで、うつ病や自殺という人々が触れにくい題材でも語り合えるようになり、助けを求めることができた」と、多くの若者から反響を受けたこともNetflixは発表していた。同番組の脚本家の一人、ニック・シェフは自身の自殺との葛藤も明かし、多くの人々からの共感も得ており、Netflixは、番組内ではイジメに関しての対処法を常に明確に示してきた。

 ところが、この第1シーズンの自殺シーンへの批判を受け入れ、編集という形で対処するまでには、2年という月日を要することとなった。今回、その突然の対応について、同番組のクリエイターのブライアン・ヨーキーは「今夏配信予定のシーズン3の準備をするにあたり、このドラマについて議論されている内容についても気を配った」と語り、さらに彼は「全米自殺防止財団の主席医務官クリスティーン・ムーティエや多くの団体から懸念する声を聞き、Netflixと同意のもとに編集した」と報告した。

『13の理由』

 さらに赤裸々な自殺シーンが含まれていた第1シーズンの配信後、ティーンの自殺が増えたとの報告もあった。事実、National Institute of Mental Healthによると、同番組が配信された2017年3月31日の翌月、4月には10歳~17歳のティーンエイジャーによる自殺率が一挙に28.9%も増加し、これは過去5年間で最も急激に増加した月になったそうだ。もっともアメリカでは、スマホが普及してからは、常にティーンエイジャーの自殺率が増えているため、同番組だけがティーンエイジャーの自殺に繋がるとは限らない。

 加えて、TVや映画のワンシーンの方が、両親や家族がもたらす日々の生活の愛情よりも影響力が大きく、そのワンシーンによってティーンエイジャーたちを自殺に追い込むことがあるのだろうか? と疑念を抱く世間の声もある。さらに、TV、映画、音楽などの作品の影響を、ティーンエイジャーの自殺の原因と結びつける親や自殺防止機関に問題があるのではないか? と問いただす意見もあがっている。

 だが、今回のNetflixの喫煙シーンのカットと自殺シーンの編集は、表現の自由という言葉を借りて、臆することなく描写してきたアメリカのエンターテインメント業界に、一石を投じる形にはなったようだ。

参考

https://deadline.com/2019/07/netflix-stranger-things-truth-initiative-study-tobacco-depictions-1202641738/
https://truthinitiative.org/sites/default/files/media/files/2019/07/WUWS-SOD-FINAL.pdf
https://variety.com/2019/digital/news/stranger-things-netflix-smoking-reduce-depictions-1203258913/
https://www.healthline.com/health-news/can-onscreen-smoking-influence-viewers-to-light-up-too
https://www.hollywoodreporter.com/live-feed/netflix-vows-curb-onscreen-smoking-stranger-things-criticism-1222797
https://deadline.com/2019/07/netflix-edits-13-reasons-why-suicide-scene-1202646773/
https://www.forbes.com/sites/christopherrim/2019/07/19/netflix-needs-to-do-more-than-cut-the-suicide-scene/#66a3c4124774
https://theplaylist.net/netflix-edits-out-suicide-13-reasons-why-20190716/
https://www.nimh.nih.gov/news/science-news/2019/release-of-13-reasons-why-associated-with-increase-in-youth-suicide-rates.shtml

■細木信宏/Nobuhiro Hosoki
海外での映画製作を決意し渡米。フィルムスクールに通った後、テレビ東京ニューヨーク支局の番組「ニュースモーニングサテライト」のアシスタントとして働く。現在はアメリカのプレスとして働き13年目になる。

■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン1~3配信中
Netflixオリジナルシリーズ『13の理由』シーズン1〜2配信中
公式サイト:https://www.netflix.com/

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