『セッション』から『ハッピー・デス・デイ』まで “早い、安い、美味い”ジェイソン・ブラムの仕事

プロデューサー、ジェイソン・ブラムの仕事

『ハッピー・デス・デイ 2U』(c)Universal Pictures

 まずは『ハッピー・デス・デイ』(2017年)と『ハッピー・デス・デイ 2U』(2019年)の2連作。自己中クソビッチ女子大生が、殺人鬼に殺される誕生日を繰り返すという風変わりなタイムループホラー。本国公開時、日本の好事家の中で話題になった作品がようやく公開となる。殺人鬼に殺されないようにと何度もトライ・アンド・エラーで同じ日を繰り返すうち、自己中クソビッチが真人間として立ち直っていく様は感動的ですらある。“死のループは最高の自己啓発!”というわけだ。ちなみに続編は、パラレルワールドに迷い込み再度同じ日を繰り返すハメになる。ただし、予算も難易度も倍増。パラレルワールドだから1作目と同じ方法で死を逃れることができないという寸法だ。さらにタイムループを起こした原因まで明かされ、『シュタインズ・ゲート』あたりが好きなゲーム・アニメファンにもオススメしたい作品。

『アス』(c)2018 UNIVERSAL STUDIOS (c)Universal Pictures

 そして『アス』(2019年)。人種差別問題へのスラップスティックなアプローチで映画ファンを騒然とさせた『ゲット・アウト』(2017年)から2年。ジョーダン・ピール監督の期待の一作だ。その内容はというと「自分のドッペルゲンガーが殺しにやってくる」という現象が世界規模で発生するというもの。公開予定が9月とまだ先になるので、詳細を語ることは避けるが、このプロットは最終的にアメリカが抱える貧困問題へと辿り着く。あらゆる社会問題を笑いへと昇華させることで、破壊的な衝撃を与える手法は如何にもジョーダン・ピール。ただし、わかりやすい聖書の引用や80年代ホラー映画へのオマージュ、そして流血シーンの増加など、『ゲット・アウト』よりも娯楽性が高くなっている。

『アップグレード』(c)2018 UNIVERSAL STUDIOS

 加えて『インシディアス 序章』(2015年)に続く、リー・ワネルの監督第2作目『アップグレード』(2018年)も日本公開が決まった。妻を殺された上、自分は全身麻痺にされた男。彼が脊椎にAIチップを埋め込み、麻痺を克服。妻の敵を討つべく壮絶な戦いを繰り広げる。AI任せに自分の意思とは全く無関係に体が動き、ドニー・イェンもビックリなアクションで悪者を血祭りに上げていく様子は爽快の一言。如何にもジェイソン・ブラム プロデュース作品といった具合だ。

 期待の新作公開が続くジェイソン・ブラム プロデュース作品だが、日本公開のアナウンスがない傑作がまだまだあるのだ。一見優しいオバチャンがパリピな若者にお仕置きを喰らわす『Ma』(2019年)や、精神病院から退院した男が曰く付きの屋敷で幽霊の幻覚に苦しめられる『Delirium』(2018年)等々、掘り出し物が大量に眠っている。『ハッピー・デス・デイ』も日本上陸まで2年も掛かってしまったが、そろそろ日本の配給業者は、もっとジェイソン・ブラムに注目すべきなのだ。

■ナマニク
ライター。ZINE『残酷ホラー映画批評誌 Filthy』発行人。『映画秘宝』にて「ナマニクの残酷未公開 Horror Anthology」連載中。単著に『映画と残酷』(洋泉社)がある。2011年シッチェス映画祭に出展された某スペイン映画にヒッソリと出演している。

■公開情報
『ハッピー・デス・デイ』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
製作:ジェイソン・ブラム
監督・脚本:クリストファー・ランドン
出演:ジェシカ・ロース、イズラエル・ブルサード
配給:東宝東和
(c)Universal Pictures
公式サイト:https://www.universalpictures.jp/micro/happydeathday

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