『X-MEN』も『ゴジラ』も『ジョン・ウィック』も ハリウッドを席巻する『ゲースロ』スターたち

ハリウッドを席巻する『ゲースロ』スターたち

 もちろん、別にこれは「大抜擢」というわけではなく、今年5月に最終章のフィナーレを迎えたばかりのテレビシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』の異常人気と同作における彼女の存在感の大きさをふまえれば順当な役者としてのステータス。日本でもここにきてメディアで特集が組まれるなど認知度が増してきた『ゲーム・オブ・スローンズ』だが、まだ同時代の海外の人気テレビシリーズを見ることがそこまで日常化してない日本の観客の中には、彼女がどうしてこんなに大きな役をやっているのか不思議に思った人もいただろう。

 2010年代に入ってから、テレビシリーズで大きく知名度を上げた役者がハリウッド大作で重要な役を演じることは常態化しているが、中でも『ゲーム・オブ・スローンズ』は群を抜いて大きな影響力を映画界に及ぼすようになってきている。今年のヒット作だけでも、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』で(モンスターではなく人間の)敵となる環境テロリストのボスを演じたのは、『ゲーム・オブ・スローンズ』でラニスター家総督タイウィン・ラニスターを演じたチャールズ・ダンス。日本では10月公開となる『ジョン・ウィック:パラベラム』で暗殺者のボスを演じたのは、『ゲーム・オブ・スローンズ』で切れ者の傭兵ブロンを演じたジェローム・フリン。ソフィー・ターナーによるダーク・フェニックスと『ゲーム・オブ・スローンズ』終盤以降のサンサのキャラクターのシンクロぶりもそうだったが、注目すべきは、ただ映画で大きな役にキャスティングされているだけでなく、そこには必ず『ゲーム・オブ・スローンズ』での役への目配せがあること。

 既報の通り、『ゲーム・オブ・スローンズ』の主要クリエイターは2022年から始まる新しい映画版『スター・ウォーズ』シリーズを手がけることが決定しているが、それを待たずして、もはや『ゲーム・オブ・スローンズ』を見ていなければハリウッド映画の大作で制作者たちが何を意図しているのかが正確にはわからない時代へと突入している。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『X-MEN:ダーク・フェニックス』
全国公開中
出演:ソフィー・ターナー、ジェームズ・マカヴォイ、マイケル・ファスベンダー、ジェニファー・ローレンス、ジェシカ・チャステイン
監督:サイモン・キンバーグ
配給:20世紀フォックス映画
(c)2019 Twentieth Century Fox Film Corporation
公式サイト:http://www.foxmovies-jp.com/darkphoenix/

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