ユースケ・サンタマリア、滝藤賢一、西島秀俊、藤木直人……40代俳優たちの“甘さとほろ苦さ”

40代俳優たちを“珈琲”に例えると?

『なつぞら』藤木直人

『なつぞら』写真提供=NHK

 年齢を重ねるほど魅力を増すといえば、記念すべき朝ドラ100作目『なつぞら』(NHK総合)に出演中の藤木直人も46歳。1995年に映画『花より男子』の花沢類役でデビューし、1999年には朝ドラ『あすか』(NHK総合)で主人公の相手役を演じ、20年後には主人公の育ての父を演じるというイケメン俳優の鑑となるようなキャリアを積んでいる。

 現在放送中の連続テレビ小説『なつぞら』で藤木が演じるのは、主人公・奥原なつ(広瀬すず)の育ての父である柴田剛男。頑固で無骨な義父(草刈正雄)に対して強く物が言えない婿養子をおおらかにチャーミングに演じて、その優しい笑顔を印象づけた。

 2005年から出演しているトーク番組『おしゃれイズム』(日本テレビ系)ではゲストの魅力を引き出す役柄に徹しているが、ただ空気を読むのではなく、より良い状況を作り出すような柔軟な対応力のような大人の力を感じさせる存在でもある。かっこいいイケメン俳優としての需要に応えるだけでは、ここまでのキャリアを築けなかっただろう。自らよい状況を作りだし、賢い選択をしていく、そういった力が備わって現在のポジションがある。老若男女問わず、熱い視線を浴びる理由がここにあるのだ。

大人の苦み☆ 大人の甘さ☆☆☆ 色気(香り)☆☆

『わたし、定時で帰ります。』ユースケ・サンタマリア

 そして、6月18日に最終回を迎える『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)で主人公、東山結衣(吉高由里子)のブラックな上司・福永を演じて話題のユースケ・サンタマリア(48歳)。

 公式サイトのインタビューで「WEB制作会社に勤める主人公・結衣の上司。現実でもよくいる人だと思います。ブラック上司だって言われているんですけど、僕の年代ってこういう感じなんじゃないかなと」と本人が語るように、会社勤めをしたことがある人ならばわかる、とらえどころのない困った存在を飄々と演じている。

 自分が悪いとも、周囲を困らせているとも思っていないが、「必ず定時で帰る!」「残業しない!」をモットーに生きる結衣にとっては大きな壁となって立ちふさがり、チーム最大の敵役となるのが部長の福永であり、ユースケ・サンタマリアだ。

 福永が以前社長で売却した会社はブラック企業体質で、社員がごっそり逃げ出したとか、心身ともに病んでしまった人が多くいたという噂もある。実際、結衣の周囲にいる制作4部の人たちも福永部長に言いくるめられて、ファミレスに仕事を持ち込んでサービス残業するなど疲れが目立ち始める。部下には残業をするように仕向けて、フォローは副部長の種田晃太郎(向井理)任せ。ドラマの中で福永が仕事をしているように見えないところもSNSなどで指摘されている。

 お調子者で部下に対して明るく声をかけながらも、目は笑っていないという理不尽な上司をこんなにもナチュラルに演じられる人はユースケ・サンタマリアを置いてほかにはいないかも? とさえ思える。

「今回はいつもよりはみんなに話しかけたりしなかったんです。ネットヒーローズのメンバーの中では僕が最年長。しかも、役どころ的にめちゃくちゃみんなから慕われている人でもない。だから役作りってわけじゃないんですけど、距離が少しあった方がいいかなと思って。あえて孤立して話しかけない雰囲気を作っているわけではないんですけどね。普段はコミュニケーション取った方がいいかなと思って、積極的に話しかけたりしてたんですけど、今回は大丈夫かなって。だから、すごく楽です。好きなときに会話に入っていって、自由に現場で過ごさせてもらっています(笑)」(公式サイトのインタビューより)

 おちゃらけキャラで場を盛り上げるイメージが強いが、役柄も実年齢も48歳の大人の男。日常に潜む理不尽を体現するような、周囲にとけ込みながらも人々の意識に影響を与えていく福永の得体の知れない不気味さをここまでリアルに演じられるのはユースケだからこそ。経験を積むことでさらに自由になり、気負いなく難しい役柄に挑めるというのは、年齢や性別に関係なく見習いところ。年長者の鑑ともいえる。

 明るく軽いタッチながらも、現代の生き方を問う『わたし、定時で帰ります。』を最後まで盛り上げる理不尽ブラック上司役がハマったユースケ・サンタマリア。やっぱり40代俳優は面白くて、味わい深い魅力にあふれている。

大人の苦さ(ブラック度)☆☆☆☆☆

■池沢奈々見
恋愛ライター、コラムニスト。

■放送情報
火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』
TBS系にて毎週(火)22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/

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