西島秀俊の「ありがとう」に込められたもの 『きのう何食べた?』が描いた愛すればこその不安

『きのう何食べた?』愛すればこその不安

 落ち着いたケンジは、美容室での出来事やシロさんが受け取った「バッグ」がきっかけで小日向さんとの関係を疑ったことを正直に話す。バッグが佳代子(田中美佐子)からプレゼントされたものと知り、安堵するケンジが可愛らしい。「ごめん〜」と謝りながらシロさんの懐に頭をグリグリと押し付ける姿と、そんなケンジに微笑むシロさんの姿に、視聴者も安心したことだろう。

 ドラマ終盤、シロさんはケンジにこう伝えた。「お前に「ごめん、ごめん」って謝り倒されるより、「ありがとう」って言ってもらえるほうがずっと嬉しいよ」「もう謝んなくていいって」、シロさんとケンジは穏やかな表情で2人で過ごす休日を味わっている。同じ景色を眺める2人の姿から、強い絆が伝わってくる。

 第10話では、ケンジと父親の関係についても描かれた。生活保護を受ける父親(内田文吾)の扶養照会の書類が、父親との唯一のつながりだと話すケンジ。父との思い出を話すケンジの口調は軽やかだが、「どんなに関係の深い人でも、許せない人と続けていくのはしんどいよ」と吐露する。だが、ケンジの過去が明らかになったことで、シロさんとの穏やかな将来を望むケンジの思いが、より説得力のあるものとして描かれた。感情豊かなケンジの、シロさんへの深い愛情が存分に伝わってくる回となった。

■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。

■放送情報
『きのう何食べた?』
テレビ東京系にて、毎週金曜深夜0:12〜
※テレビ大阪は翌週月曜深夜0:12〜放送
原作:よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社『モーニング』連載中)
主演:西島秀俊、内野聖陽、マキタスポーツ、磯村勇斗、チャンカワイ、真凛、中村ゆりか、田中美佐子、矢柴俊博、高泉淳子、志賀廣太郎、山本耕史、磯村勇斗、梶芽衣子
脚本:安達奈緒子
監督:中江和仁、野尻克己、片桐健滋
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:松本拓(テレビ東京)、祖父江里奈(テレビ東京)、佐藤敦、瀬戸麻理子
OPテーマ:「帰り道」O.A.U(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)<NOFRAMES / TOY’S FACTORY>
EDテーマ:「iをyou」フレンズ<ソニー・ミュージック・レーベルズ>
制作:テレビ東京/松竹
製作著作:「きのう何食べた?」製作委員会
(c)「きのう何食べた?」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kinounanitabeta/
公式Twitter:@tx_nanitabe

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