『アラジン』はウィル・スミスの新たな代表作に ハイテンション演技と悲しげな目つきの説得力

『アラジン』ウィル・スミスの新たな代表作に

 ところがどっこい、本作でウィルは完璧に役目を果たしている。万能の力を持っている魔人をテンションMAXで怪演。90年代に少年時代を過ごした人間としては、特殊効果もあって『マスク』(1994年)のジム・キャリーを思い出した。そんなハイテンション演技をする一方で、悲しげな目つきだけで「1000年も真っ暗なランプの中に1人で閉じ込められていた」という孤独にも説得力を持たせている(ウィル・スミスは明るい会話の中で不意に悲しい目をするシチュエーションが抜群にハマる)。ハイテンション演技は90~00年代の経験、そして後者は00~10年代のウィルのキャリア、先ほど書いたような「俺! 俺! 俺!」的なパブリックイメージからの脱却を図ろうとした苦労の産物だろう。最近でもシリアスに徹した『コンカッション』(2015年)や、『スーサイド・スクワッド』(2016年)で超人軍団の一員として目立ち過ぎず、脇に徹していたのも記憶に新しい。こうした映画で培った“いち俳優”としての実力が遺憾なく発揮されている。

 もちろん目立ちまくりのダンスシーンや、久々にエンディングでラップを決める大サービスも。“いち俳優のウィル・スミス”としてだけでなく、“大スターのウィル・スミス”としても全力投球している。俳優として、存在するだけで目立つスターとして、現時点でのウィル・スミスという男の実力を堪能できる1本だ。

■加藤よしき
昼間は会社員、夜は映画ライター。「リアルサウンド」「映画秘宝」本誌やムックに寄稿しています。最近、会社に居場所がありません。Twitter

■公開情報
『アラジン』
全国公開中
監督:ガイ・リッチー
脚本:ジョン・オーガスト、ガイ・リッチー
音楽:アラン・メンケン
出演:メナ・マスード、ナオミ・スコット、ウィル・スミス
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2018 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved
公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/aladdin.html

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