井浦新が持つ役者としての温かさ 『なつぞら』仲役に通ずる映画界での立ち位置

井浦新が役者として発する温かさ

 1999年公開の『ワンダフルライフ』で映画初出演を果たし、以降20年ものキャリアを重ねてきた井浦。2000年代後半からはテレビドラマでの活躍も大きいが、やはり映画での姿が印象的だ。気鋭の若手監督からベテラン監督まで、ジャンルを問わず数々の作品に出演。作品規模を問わず積極的に参加するその姿勢には、多くの映画ファンが魅了されている。とくに昨年公開の『止められるか、俺たちを』での姿が印象深く、また同時に感慨深いものがあった。彼が演じたのは、2012年に亡くなった若松孝二監督役。作品は若松監督が日本映画界のニュー・ウェーブとして登場してきた当時の、ある種の青春時代を描いたものである。井浦は、若松監督の後期の作品に主要な役どころで数多く出演した経緯があり、そんな彼が若松監督に扮したことは、映画ファンの胸を熱くさせたのだ。これは翻って、井浦が日本映画界に欠かすことのできぬ存在であり、愛されている事実とも見て取れるだろう。

 井浦自身の映画界での立ち位置と、『なつぞら』内でのアニメーターとしての立ち位置は、どこか通じるところがあるように思える。実際の撮影現場でも、若手の演者たちを優しくフォローしているのではないだろうか。仲努という人物が発する温かさには、そんなことさえ感じてしまう。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人/岡田将生、吉沢亮/安田顕、音尾琢真/小林綾子、高畑淳子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる