『海獣の子供』『ゴジラ』『まんぷく』……芦田愛菜、声優/ナレーション業で発揮する豊かな表現力

芦田愛菜の“物語る上手さ”

 思えば、1週先に封切られたハリウッド映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でも、芦田は日本語吹き替え版にて声の出演を果たしている。こちらもまた、同年代のキャラクター。ゴジラたち怪獣を巡る両親の思想の違いに翻弄されながら、彼女は彼女で、自身の考えを持って行動していくという役どころだ。セリフよりも、苦しそうにあえぐ声や悲鳴などが多いのだが、それら一つひとつの表情が実に豊かである。それは『海獣の子供』への期待値がより高まる好演と言えるものだ。

 いわゆる“天才子役”として名を馳せ、幼少期より華々しいキャリアを積み上げてきた芦田だが、それに伴い豊かな表現力を育んできたことは、多くの者が知るところだろう。本稿を読んでいる方のほとんどが、現在に至るまでの彼女の成長を見てきたはずである。数多くの作品で主役や、主人公の幼少期の姿といった主要な役どころを務める傍ら、劇場アニメや海外作品の吹き替え声優を務めてきた。

 そんな中で芦田の声の仕事といえば、朝ドラ『まんぷく』(NHK総合)でナレーションを担当したことも記憶に新しい。溌溂としていて温かみのある彼女の声は、激動の時代に一つの目標に向かって一丸となり突き進んでいく多くの人々を包み込み、その物語の推進力としても機能していたように思う。史上最年少でのナレーター抜擢とあって、彼女の代表作の一つとして語られるであろう作品である。

 冒頭で述べたように、どれも“今しかできない”、そして“今だからこそできる”芦田の物語る上手さだが、これからの彼女への期待感を、大いに煽られるものに違いはない。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter

■公開情報
『海獣の子供』
全国公開中
原作:五十嵐大介『海獣の子供』(小学館 IKKICOMIX刊)
キャスト:芦田愛菜、石橋陽彩、浦上晟周、森崎ウィン、稲垣吾郎、蒼井優、渡辺徹、田中泯、富司純子
監督:渡辺歩
音楽:久石譲
キャラクターデザイン・総作画監督・演出:小西賢一
美術監督:木村真二
CGI監督:秋本賢一郎
色彩設計:伊東美由樹
音響監督:笠松広司
プロデューサー:田中栄子
アニメーション制作:STUDIO4℃ 
製作:「海獣の子供」製作委員会 
配給:東宝映像事業部
(c)2019 五十嵐大介・小学館/「海獣の子供」製作委員会
公式サイト:www.kaijunokodomo.com
公式Twitter:@kaiju_no_kodomo

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