『腐女子、うっかりゲイに告る。』脚本家・三浦直之が目指す、新しいボーイ・ミーツ・ガールの物語

『腐女子~』脚本家・三浦直之が語る

「本当にこのドラマに関われて良かった」

ーー三浦さんを通して、劇団ロロを知る方も多いかと思います。

三浦:理想としてはロロだけやって、メンバーみんなが食っていけたら一番いいんですけど難しいです。やっぱりロロをやっているときが一番楽しいですね。僕はロロが普段演劇を見ない人も見に来る場所になるといいなと思うし、そういう出会いを広げるためにいろんなお仕事をやらせていただくこともあります。

 ロロは大学の仲間で結成して、今年で10年になるんですけど、劇団という形でここまで続けているところってあまりなくて。プロデュースユニットみたいなものが増えて、昔みたいに「小劇場すごろく」がなくなった今、どうやって劇団という場所・コミュニティを再構築できるかが僕の今の一番の関心です。作品としては、『いつ高』シリーズという高校演劇に感動して始めた青春群像劇のシリーズ物とは別に、本公演では人が未知の物に出会って、新しいところに踏み出せたり、既存の家族や恋愛を超えたコミュニティが立ち上がることを考えながら作っています。6月22日からは新作本公演として『はなればなれたち』をやります。

ーー原作ありきの本作の脚本執筆の経験が、今後演劇の分野で活きることもあるんでしょうか?

三浦:自分じゃ書けない言葉を考えるという経験はありがたかったです。やっぱり自分一人の世界観だけでずっと続けていたら限界があるから、こういう機会はこれからも大事にしていきたいと改めて思いますね。

ーーより外部の人たちと作業をしたり、原作を基に執筆することも展望としてありますか?

三浦:そういうことをやってみたいという気持ちは強くなっています。僕は、暴力や悪をしっかり正面から書いてみたいといつも思っているんですが、どうしても書けないんですよね。そういう時に外側にあるものから始めていくことは考えますね。

ーー三浦さんが『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』を通して伝えたいメッセージはありますか?

三浦:「世界を簡単にしない」ということ。原作の通りですが、自分が脚本を書く時のアプローチにおいてもこれを実践しなくちゃいけないと考えて、全てのキャラクターに対して、「わかった」と思わないことを念頭に置きました。そのことが届いてくれれば嬉しいです。番組の掲示板で、共感の声を見ると、本当にこのドラマに関われて良かったと思います。

(取材・文・写真=島田怜於)

■放送情報
よるドラ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』
番組公式ホームページにて、これまでの見どころを公開中!
https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/fujoshi/
最終回(6月8日(土)NHK総合 23:30~)
[あらすじ]純(金子大地)は、亡くなったネット上の友人・ファーレンハイト(声・小野賢章)との約束を果たすため、紗枝(藤野涼子)と、彼の家を訪ねる。心の支えだった親友の素性を知ることにためらう純だが、遺影に写る彼の姿に衝撃を受ける。その帰り、純は紗枝に二人のこれからについて、思いを伝える。さらに、純はマコト(谷原章介)と会う。「奥さんと僕が溺れたら、どちらを助ける?」純の質問に、マコトは静かに答え始める……。

原作:浅原ナオト「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」
脚本:三浦直之
出演:金子大地、藤野涼子、小越勇輝、安藤玉恵、谷原章介 ほか 
演出:盆子原誠、大嶋慧介、上田明子、野田雄介
プロデューサー:尾崎裕和
制作統括:篠原圭、清水拓哉
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/yoru/fujoshi/

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