『海獣の子供』『きみと、波にのれたら』『天気の子』 今夏アニメ映画の注目ポイントを一挙解説!

注目の夏アニメ映画3作を一挙紹介!

『きみと、波にのれたら』

 夏アニメということで、『海獣の子供』でも迫力ある海のシーンが登場するが、近年、『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』(2017)、『DEVILMAN crybaby』(2018)といった傑作を矢継ぎ早に発表し、国内でもさらにファン層を広げた湯浅政明の6月21日公開の最新作『きみと、波にのれたら』も魅力的な「海のアニメ」に仕上がっているようだ。物語は、サーフィン好きの女子大生のもとに、海の事故で亡くなった消防士の恋人が歌を歌うと現れる……という一風変わったラブストーリー。脚本は山田尚子作品や『若おかみは小学生!』(2018)で知られる吉田玲子。主演の片寄涼太がメンバーを務めるGENERATIONS from EXILE TRIBEが主題歌に起用されている。

『きみと、波にのれたら』(c)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会

 海(水中)に現れる異形の存在と人間の主人公が交流し、一つになるというあらすじは、『海獣の子供』の物語とも一脈通じるところがあるほか、2年前にヴェネチア国際映画祭グランプリやアカデミー賞作品賞を受賞し、話題となったギレルモ・デル・トロの映画『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)を髣髴とさせる。また、それ以上に、同様の物語に加え、それが「主人公が歌う歌によって発生する」という設定は、明らかに過去作『ルー』との連続性も感じさせるだろう。

『きみと、波にのれたら』(c)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会

 何よりも、湯浅作品という点で気になる本作のポイントは、やはりその独特の映像表現である。アニメファンには知られるように、湯浅は独特の崩したパースやキャラクターのフォルムを特徴として持つアニメ作家だ。また、彼が2013年に立ち上げた自らのスタジオ「スタジオSARU」では、Flashを用いたデジタルアニメーションの新しい可能性を模索しており、その成果は『ルー』でキャラクターたちの個性的な動きや映像演出として全面的に発揮された。Netflixで全世界配信された前作『DEVILMAN crybaby』に続き、そうした野心的なFlashアニメーションの試みが、今回の作品ではどのように展開されているかも見どころだろう。

『きみと、波にのれたら』(c)2019「きみと、波にのれたら」製作委員会

 例えば、具体的にはやはりタイトルにもある通り、波などの水の表現。もともと戦後日本のアニメーションにおける波や水の表現は、主に1970年代頃に東映動画からキャリアをスタートしたアニメーターたちが、試行錯誤の末にその手本を作り上げたとされる。例えば、『どうぶつ宝島』(1971)の小田部羊一や『未来少年コナン』(1978)の宮崎駿などだ。それらはセルアニメーションの場合に、作画も効率的で、かつ表現としてもリアルさを感じさせることのできるメソッドとして編み出されたものだった。しかし、いまや時代はデジタルになり、コンポジットでさまざまなエフェクトをつけられるようになったことで、セルアニメ時代には不可能だった、新しい表現が次々に現れている(例えば、『Free!』(2013〜)などが典型的だろう)。『ルー』でも四角い固形になったり、魅力的な海の描写が登場したが、『きみなみ』ではどんな「波」が見られるのか。『海獣の子供』の海の表現と比較しても面白いだろう。あるいは、非モテ男子の恋を描いた『夜は短し』と、どこかリア充っぽい(なにせEXILE)今回の新作で湯浅作品の恋愛描写の違いも楽しんでみては?

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