世界的ホラーアイコン『貞子』は、日本映画界きっての「孝行娘」!?

『貞子』日本映画界きっての「孝行娘」!?

 ちなみに日本国内において最も興収を稼いだ『リング』フランチャイズは、1999年公開の『リング2』(『死国』と併映)で21億円(当時発表されている数字は興行収入ではなく配給収入。興行収入では推定約40億円)。なんと、その年の実写日本映画の年間1位に輝いている。それ以降も、日本だけでクロスオーバー作品も含めて5作品が製作されてきたわけだが、時が経つにつれて大ヒットシリーズというより、比較的低予算の製作費で手堅く稼ぐことができるフランチャイズとして定着していった。

 直接の前作にあたる『貞子3D2』(2013年)のオープニング土日2日間の成績は動員11万4000人、興収1億6100万円。直近の関連作『貞子vs伽椰子』(2016年)のオープニング2日間の成績は動員14万1000人、興収1億9900万円。今回の『貞子』が金曜日公開であることを勘案すると、それらとほぼ横並びの、フランチャイズとしての恐るべき安定感を示していることがわかる。海外でも日本でも、ホラー映画の観客の中心層は10代から20代のカップルや友達同士。21年に及ぶ『リング』フランチャイズの歴史においては、当然のように何度も世代交代があったはず。ホームランを飛ばすわけではないが、それでも打席が回ってくれば確実に塁に出る「貞子」。そんな日本映画界の「孝行娘」に、恐ろしさよりも愛らしさを覚えるのは自分だけだろうか。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『貞子』
全国公開中
出演:池田エライザ、塚本高史、清水尋也、姫嶋ひめか、桐山漣、ともさかりえ、佐藤仁美
※桐山漣の漣は「さんずいに連(しんにょうの点が1つ)」が正式表記
原作:鈴木光司『タイド』(角川ホラー文庫刊)
監督:中田秀夫
脚本:杉原憲明
配給:KADOKAWA
(c)2019「貞子」製作委員会
公式サイト:sadako-movie.jp
貞子公式Twitter:@sadako3d

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