『わたし、定時で帰ります。』から学ぶ“逃げるが勝ち”というライフハック 大切なのは対話の積み重ね

『わた定』が描く“逃げるが勝ち“の精神

 残念ながら、ハラスメントを根絶やしにすることはできないだろう。イジメがなくならないのと同じように、ズルい部分にぐいぐいと入り込んでくる人はいるのだ。それを「許せない」と憤る人がいれば、「なぜそれがダメなのか」という人もいるということ。どちらが「悪」かは、その人によって異なる。そぐわない価値観に出会ったとき、「それは悪だ」と打ち負かそうとしては、永遠に戦いは終わらない。

 自分にとって、良くも悪くもいろいろな考え方があるのを知るということ。それが、多様性のある社会の第一歩。そして、様々な考え方があるからこそ、今目の前の耐えられない価値観に苦しみ続けることもないのだ。

 「自分が我慢すればいい」という一択しか見えてない人に「次、行きましょう」と、別の道があることを示すだけでも、それは十分な救いになる。いや、それ以上のことはできない。結局、その道を選ぶかどうかは相手次第なのだから。

 社会に生きていれば、どうしても異なる価値観を持つ人と接しなければならない。それでも同じ環境で生き、関わり続けていきたいのであれば、相手の価値観を知るところから始めるしかないのだ。「大切にされたい」というのは、どんなに価値観が異なっても、変わらない人間の欲求。そして、相手を大切にする最も身近な方法のひとつが対話だ。

 しかし、ドラマの中では「何を話していいかわからない」からプライベートな情報を追求して、セクハラになってしまうと悩む場面もあった。その場合には、相手の現状を根掘り葉掘り聞くよりも、自分が何を困っているのか話すことから始めてみてはどうだろうか。「これはハラスメントになる?」「僕的にNGですね(笑)」と、ワーキングマザーの賤ヶ岳(内田有紀)と新人社員の来栖(泉澤祐希)が、交わしていたように。

 相手を利用できるかどうかを探る会話と、相手を大切にする方法を模索する対話。これを機に、自分は今どんな目的で相手と話しているのかを見つめ直してみるのも、いいかもしれない。いい仕事は、そしていい人生は、きっと対話の積み重ねでできていく。

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(文=佐藤結衣)

■放送情報
火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』
TBS系にて、毎週火曜22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/

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