『コナン』75億! 『アベンジャーズ』40億! 10連休は映画業界のためにあった!?

10連休は映画業界のためにあった!?

 「アメコミ映画の興行は初速に偏重しがち」というのは、その興収のケタこそ違えど、海外にも日本にも共通する悩ましい傾向ではあったが、ここまですさまじい勢いだともはや「初速がどうこう」という次元ではない。過去作品の「予習」が要求される作りとなっていることを不安視する見方もあった一方で、ここ日本でもそれを超える熱狂が渦巻いていて、リピーターが続出していることや、連休が明けてウィークデイに入ってからも再び1位に返り咲いていることも含め、『エンドゲーム』はこれまでのマーベル・シネマティック・ユニバース作品にはなかった広がりを見せている。その記録がどこまで伸びるかも気になるが、自分がそれよりも重要視しているのは、今作の大ヒットがこれまで国外と日本で大きな温度差のあったマーベル作品、ひいてはアメコミ作品全体の底上げにつながるのではないかということ。実際、『エンドゲーム』をより深く楽しもうと、多くの人がマーベル・シネマティック・ユニバース過去作をストリーミングやレンタルで遡って初見/再見するという現象も起こっている。

 ところで、そもそも「ゴールデンウィーク」という呼称自体が、1951年に当時の大映常務取締役、松山英夫によって作られた「宣伝用語」であったことをご存知だろうか? 2019年の映画業界は、自分たちの業界がひねり出した「ゴールデンウィーク」という言葉に引き寄せられて、その日程に関しては人為的に設定された改元によって生まれた国民的長期余暇から、68年の時間を超えて過去最大規模の恩恵を受けたことになる。「蒔いた種を刈る」とは、まさにこのことだろう。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「MUSICA」「装苑」「GLOW」「Rolling Stone Japan」などで対談や批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)。最新刊『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。Twitter

■公開情報
『アベンジャーズ/エンドゲーム』
全国公開中
監督:アンソニー・ルッソ&ジョー・ルッソ
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:ロバート・ダウニー・Jr.、クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、クリス・エヴァンス、スカーレット・ヨハンソン、ジェレミー・レナー、ポール・ラッド、ブリー・ラーソン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2019
公式サイト:https://marvel.disney.co.jp/movie/avengers-endgame.html

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「興行成績一刀両断」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる