『ルパン三世』が支持され続ける理由とは 故モンキー・パンチが漫画・アニメ界に及ぼした影響

 また、代表作である『ルパン三世』の魅力を、さやわか氏は以下のように分析する。

「アニメの『ルパン三世』は絵柄がすごく変わるんです。でもどれを見てもルパンだな、不二子だなとわかるようになっている。それはつまり、キャラクターが強力だということです。ルパンや銭形というような関係性やキャラクター像がしっかりしていて、だからこそ絵柄や世界観を変えても対応できる。あくまでも泥棒であるルパンを中心として、奇想天外なことが起こるというストーリーラインに乗ってさえいれば、かなり自由度の効くお話なんです。例えばシャーロック・ホームズはパイプを加えて鳥縁帽を被っていれば、どんな作品に出てきてもホームズだとわかるじゃないですか。『ルパン三世』にはそれがある。エンタメをやるひとつの型として『ルパン三世』という設定がとても有効に機能したと思うんです。初期には、宮崎駿さんをはじめとするクリエイターたちが、自分のオリジナルイメージのルパンを、ある種暴走して作っていくんですが、それでも作品自体は壊れずに、むしろますますみんなが好きになっていった。お話を呼び込む裾野が広かったので、宮崎さんはTVシリーズで登場するロボットに『天空の城ラピュタ』の元ネタになるようなものを仕込んでいたり、新しいアイデアやクリエイターの想像力を働かせるようなところもあったと思います」

 さらに、ルパンというキャラクターが、他の作家の手を借りることによって多方面に羽ばたいていくのも、その後のアニメ/漫画に強い影響を残したという。

「モンキー・パンチさんも、最初はアニメの絵柄が漫画と全然違うことを受け入れがたく思ったらしいですが、動いているものを見たときに『これも良いだろう』と思い直したそうです。有名な話で、『ルパン三世 DEAD or ALIVE』を自分で監督した際に、ルパンが後ろから敵を撃とうとするシーンを描こうとしたら、『ルパンはそんなことしません』と言われてすごく憤慨したんだけど、結局その規定に従ったというエピソードがあります。彼が作ったキャラクターなのに、彼自身の思っているものではなくなっているんです。みんなの心にある『ルパン』の姿を優先させ、偉大な概念としてのキャラクターになっていくことを認めたということですね。『ルパン三世』は、モンキー・パンチさんが亡き後もそういう作品として今後も根強く支持されるはずで、それは非常に稀有なことだと思います」

(構成=安田周平)

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