『きのう何食べた?』が描く、人と人との繋がり “食事シーン”が重要な役割を果たす理由

『きのう何食べた?』“食事”が重要な理由


 倹約家で、料理の手際も良く段取りもバッチリなシロさん。それに対してケンジは今のところ食べる専門。2人の関係性も、シロさんがリードしているように見せかけて、実はケンジの素直なリアクションや計算のなさにシロさんが救われているように思える。「食」を媒介にして2人が愛情を交換し合う様はあまりに自然で微笑ましい。シロさんの母親が、入院した自分の旦那を想って言う「毎日一緒に暮らしている人って特別なのね」という実感のこもった言葉がここにきて染みてくる。

 「お袋の味」という言葉もあるくらい、食には自分を育んでくれたルーツ、立ち返ることのできる場所・空間・原体験が“味覚”“嗅覚”“視覚”に記憶され、それを大切な人と共有し合えるという力がある。それがどれほど幸せなことか。これまではシロさんの家庭事情がフォーカスされてきたが、次回ケンジが抱える家族の話題にも触れられそうだ。

 「結婚」が必ずしも最上級の愛情表現とは限らないし、「結婚」という契約に胡坐をかいて日々の生活の中で愛する努力を怠っているカップルも少なくない。そんな中で、この作品はそんな制度などを凌駕する、もっと本質的で、人間的な大切なもの、繋がりを教えてくれる。

■楳田佳香
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで2018年の劇場鑑賞映画本数は96本。Twitter:https://twitter.com/Tominokoji

■放送情報
『きのう何食べた?』
テレビ東京系にて、毎週金曜深夜0:12〜
※テレビ大阪は翌週月曜深夜0:12〜放送
原作:よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社『モーニング』連載中)
主演:西島秀俊、内野聖陽、マキタスポーツ、磯村勇斗、チャンカワイ、真凛、中村ゆりか、田中美佐子、矢柴俊博、高泉淳子、志賀廣太郎、山本耕史、磯村勇斗、梶芽衣子
脚本:安達奈緒子
監督:中江和仁、野尻克己、片桐健滋
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:松本拓(テレビ東京)、祖父江里奈(テレビ東京)、佐藤敦、瀬戸麻理子
OPテーマ:「帰り道」O.A.U(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)<NOFRAMES / TOY’S FACTORY>
EDテーマ:「iをyou」フレンズ<ソニー・ミュージック・レーベルズ>
制作:テレビ東京/松竹
製作著作:「きのう何食べた?」製作委員会
(c)「きのう何食べた?」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kinounanitabeta/
公式Twitter:@tx_nanitabe

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