TAKAHIRO、佐藤大樹らの主演映画が公開 LDH所属アーティスト、“俳優”としてのポテンシャル

LDH所属アーティスト、“俳優”としてのポテンシャル

 対して、TAKAHIROが主演した『僕に、会いたかった』のトーンは、『4月の君、スピカ。』とはまったく異なる。隠岐の島を舞台にしたシリアスな作品で、監督は青柳翔主演の『渾身 KON-SHIN』や、青柳翔、AKIRA、小林直己が出演の『たたら侍』も手掛けた錦織良成。脚本を、錦織と、本作のプロデューサーも務める劇団EXILEの秋山真太郎が手掛けている。

『僕に、会いたかった』(c)2019「僕に、会いたかった」製作委員会

 本作の中でTAKAHIROは、元は凄腕の漁師だったが、記憶をなくして漁に出られなくなった主人公の徹を演じている。そんな日常に対して、徹が憤ったり、ことさらに抗うというわけではなく、海に出られずとも、漁港で真面目に働き、おだやかに生きようとしているものの、前に進めない姿が描かれている。

 本作には、母親役として松坂慶子が出ている。息子が記憶をなくしているために、どこか他人行儀な関係性であった2人が、どう変わっていくのかも見どころになっている。また、島留学で都会から島にやってきた青年を演じる板垣瑞生との釣りのシーン、同級生であった秋山真太郎とのやりとりなどを通じて、主人公の徹が徐々に変わっていく姿を、誇張せずに淡々と描き、終盤ではある境地にたどり着く。

『僕に、会いたかった』(c)2019「僕に、会いたかった」製作委員会

 『4月の君、スピカ。』と『僕に、会いたかった』は、まったく作風の違う映画であるが、普段はアーティストとして、「自分自身」を表現している2人が、そのときにしか演じられない人間を演じているという意味では共通している。

 佐藤大樹は、初々しくもその年代ならではの葛藤を抱えた高校生を、TAKAHIROも30代の半ばを迎え、飾りをすべてとっぱらった姿を演じている。当たり前のようなことだが、表現をする者が段階を追って成長していくこととリンクさせて、そのときにしか演じられないものを演じることの重要さを意識しているからこその作品だと感じた。

 LDHでは、自社で企画や配給を行うからこそ、それぞれの良さを最大限に生かす術を模索してきた。本人のキャラクターをもとに、物語を構築していく手法は、『HiGH&LOW』、『PRINCE OF LEGEND』のみならず、SABU監督の『jam』などでも多く見られた。このとき、このアーティストには、こんな役を合わせたら輝くという目線と、こんな作品でこのイメージが強くなったら、今度は裏切ろうということも大いにあるだろう。例えば片寄涼太は『PRINCE OF LEGEND』で王子を演じたが、次の段階では、彼の持つ別の一面を引き出す作品に挑戦するはず。そんな目線から、今後も様々な作品やスターが生まれていくのではないだろうか。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■公開情報
『4月の君、スピカ。』
新宿ピカデリーほかにて全国公開中
原作 :杉山美和子『4月の君、スピカ』(小学館『Sho-Comi』連載)
監督:大谷健太郎
脚本:池田奈津子
出演:福原遥、佐藤大樹 (EXILE/FANTASTICS)、鈴木仁、井桁弘恵ほか
(c)2019 杉山美和子・小学館/「4月の君、スピカ。」製作委員会
公式サイト:kimispi-movie.com
公式Twitter:@kimispi_movie

『僕に、会いたかった』
5月10日(金)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
出演:TAKAHIRO、山口まゆ、柴田杏花、板垣瑞生、浦上晟周、小野花梨、宮本裕子、吉野由志子、川村紗也、斉藤陽一郎、清水宏、山下容莉枝、秋山真太郎、黒川芽以、小市慢太郎、松坂慶子
監督:錦織良成
エグゼクティヴ・プロデューサー:EXILE HIRO
脚本:錦織良成、秋山真太郎
配給:LDH PICTURES
2019年/日本/カラー/5.1ch/シネマスコープ/96分
(c)2019「僕に、会いたかった」製作委員会
公式サイト:bokuai.jp

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