岸井ゆきの×成田凌が語る、『愛がなんだ』の綿密な演技 「リアルさにもちゃんとした意思がある」

岸井ゆきの×成田凌『愛がなんだ』対談

成田「1回でもミスっちゃいけないという緊張感はありました」

ーーお互いの印象はどうでしたか?

岸井:成田さんはすっごい優しいんですよ。気遣いというか……私がメイクさんとチョコレートの話をしていた次の日に、チョコレートを買ってきてくれたりして。覚えてる?

成田:いや、覚えてない……(笑)。ケーキ買ったのは覚えてる。

岸井:そう、最初にケーキを買ってきてくれて。また別の日に、すごい朝早くにチョコレートを買ってきてくれて、「何それ!?」みたいな(笑)。誕生日以外で現場でケーキをいただいたのが初めてだったから、すごくびっくりして。素敵だなと思いました。

成田:いや、たまたまですよ。でも僕は距離を保たれているとは思ってなかったから……(笑)。

岸井:ははは(笑)。

成田:岸井さんはとても話しやすい方ですね。パッと岸井さんのことを考えると、“笑顔”が出てくるんですよ。それが素敵ですよね。笑顔が似合うというか。

ーー“笑顔が似合う”というのはテルコにも言えることだと思いますが、岸井さんはテルコと似ているところはあるんですか?

岸井:最初に原作を読んだときは、テルコと私は全く違うと思っていたんです。私は何か好きなものを手に入れたいとは思うかもしれないけど、全てを捨てることは絶対にできないから。たぶんそこにとどまってしまう。そういうタイプだと思っていたんですけど、いざ脚本を読んで、自分のセリフになって、主観でテルコを見たら、考え方がちょっと変わったんですよね。

ーー具体的にどのように?

岸井:テルコは誰しもが持っている“人を好きな気持ち”が100%なんだなって。普通の人は、仕事とか友人とか家族とかがあって60%ぐらいなんだけど、テルコはそういうことを捨てて100%になっちゃう。だから、人を好きな気持ちはテルコも私も一緒なんだなと。そう考えてからは、テルコのすごくピュアで純粋な、愚直なまでの行動力は、ある意味とても羨ましいなと思うようになりました。そんなふうに100%の熱量で好きな人に向かっていける人は、すごく強い、そう思いながらテルコを演じていました。

ーーちなみに、岸井さん自身はマモちゃんみたいな男性をどう思いますか?

岸井:えー、いやです(笑)。

成田:(笑)。

岸井:個人的には本当にハッキリしてほしいと思います。それも全て尽くしてしまうテルコが悪いと思うんですけどね。でも、それに甘えてしまうマモちゃんもマモちゃんですよね。「2人ともしっかりして!」って感じ(笑)。

成田:なんなんだろね。2人とも“無理”なんだろうね(笑)。

岸井:でもこういうカップルいそうですよね。

成田:うん。あと、マモちゃんがただのヒモじゃなくて、ちゃんと働いてるっていうのもまた面白いんだよな。

ーーマモちゃんはなかなかクセのある男ですよね。

成田:脚本を読んだ時に、違和感なくスムーズに読めてしまったので、大丈夫かなと思ったぐらいだったんです。存分に甘えても何の害もないテルコのような人と、次は何を話そうかなと緊張感があってちょっとヒリヒリするようなすみれみたいな人、どっちも手にしたい気持ちもわかるなと。でも、いざそれを表現するとなった時は、すごく緻密で難しいなと思って。マモちゃんがどこか憎めない感じにならないと、作品としてどうにもならなくなるというか……。例えば、言い方も表情も何も変わらないんだけど、心持ちとして、今ビールを買いに行くと出て行ったテルコへの思いは、怒りなのか同情なのか、みたいな。怒りだったらただのわがままになっちゃうから、同情の方に気持ちを寄せた方が、どこか憎めないようになるのかな……とかいろいろ考えました。1回でもミスっちゃいけないという緊張感はありましたね。

ーーやっぱり自然体に見える演技もかなり細部まで作り込まれているわけですね。

成田:「これはやりすぎかな?」とか不安もあって、ちょっと怖かったですね。実際、何回か「やりすぎました」とか「落ちる方にいきすぎました」とかあったよね?

岸井:うん。あったあった。

成田:監督や岸井さんの反応も含め、難しい2択が常にあった感じだったので、みんなで最善を求めていった結果が映画にも出ています。勝手な想像でしかないんですけど、今泉監督は、“その時を切り取っている”感じがするんですよね。同じぐらい仲が良くても相手によって話し方とか絶対に違ってくるので、その瞬間瞬間を大事にしているというか。

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