現代に蘇った元祖スラッシャー・フィルム 『ハロウィン』は新旧ホラーファンを歓喜させる出来に

『ハロウィン』現代に蘇った元祖スラッシャー・フィルム 

ツッコミどころ1)高齢キラー

 本作は1978年の『ハロウィン』の直接的な続編で40年後を描いているので、マイケル・マイヤーズは61歳。定年退職してもおかしくない年齢なのに、マイケルったら姿勢はいいわ、筋肉の衰えはないわ、びっくりするほど短絡的で暴力的だわ、と規格外高齢者なんです。パワー系キラーのマイケル・マイヤーズは、素手やナイフで人々を血祭りにあげるのですが、どのシーンも「これで61」「これが61」「ここまでして61!」と年齢へのツッコミが止まりませんでした。

 マイケル・マイヤーズって、他のスラッシャー・アイドルと違って「あくまで生身の人間」という設定があるからか、パッとしなかったんですよね。しかし、反対にいえば、他のモンスターと違って「年を重ねられるキラー」ということになります。今回はその「年」がいい効果を発揮しました。製作のジェイソン・ブラムはオリジナルの『ハロウィン』の大ファンというだけあって、マイケル・マイヤーズを魅力的に見せる術を理解しています。本当、あんな61歳、ツッコミを入れずに見ていられませんよ。

ツッコミどころ2)拗らせたローリー

 本作には、オリジナルキャストのジェイミー・リー・カーティスが再びローリー・ストロード役を演じています。ローリー・ストロードといえば、真面目で性に奥手で最後にモンスターと対峙するファイナル・ガールの代名詞。しかし、40年の時を経てアラ還になったローリーは、来るべきマイケルとの最終決着に向けて、家を改造し、銃の訓練をし、娘にもサバイバル技術を叩き込む戦う女になっていました。ところが周囲からは常軌を逸した行動にみられ、娘は保護されてしまいます。誰にも理解されることなく、マイケルの影に怯えて暮らすローリーは、いつしかマイケルの中に自分の存在意義を見出すようになってしまいました。

 そのため、来るべき日のために備えているといいつつ、的を射ていないのです。例えば、彼女がマイケルを家に誘い込んで殺そうとしているのであれば、死角が多い広い家なんてもってのほか。また、隠れ場となるクローゼットもドアは取っ払って見通しをよくしておくべきです。彼女は射撃訓練用に顔が白いマネキンを使っていましたが、マイケルが家にやってくることを考えれば外見がそっくりな人形を庭に置いておくなんて言語道断。前作であんな恐怖体験をしたというのに、それが全く活かされていなくて、もうどこからツッコんでいいのやら……。

 自らフラグをたてまくるローリーの行動を見ていると、マイケルを殺したいというのは口ばかりで、本当は40年前の出来事を再現して欲しい、なんなら『トムとジェリー』並みの関係になることを望んでいるのではないかとすら思えてくるのです。

ツッコミどころ3)コッテコテな犠牲者の方々

 今回、マイケルとローリーのシャレにならないじゃれ合いを彩ってくれる犠牲者の方も、お約束通りのスラッシャーあるあるで楽しませてくれます。他人の家で一戦交える、他人の持ち物を勝手に触る、殺人者の能力を軽んじて挑発してみる、といった殺人フラグをたてまくり。最近は、予想外の展開を楽しむホラーばかりだったので、この時代にこんなド直球クリシェにツッコミを入れられるなんてと、感無量でした。

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