『なつぞら』内村光良、“父”として“語り”として物語を包み込む 随所に散りばめられた粋な演出

内村光良、『なつぞら』を包み込む優しさ

 今更ではあるが厳密に言えば、第2週まででナレーションは広瀬すずも担当している。第2週目のラストに9年後という設定でヒロインは粟野咲莉から広瀬へとバトンタッチするが、9歳のなつが東京で戦争孤児として懸命に生きていた頃を回想するシーン、なつの心情を代弁する際に広瀬がナレーションへと入る。

 直近の朝ドラ作品で言えば、これは『半分、青い。』のパターンと似ている。楡野鈴愛の幼少期のナレーション、心情を永野芽郁が担当し、他界後は空から鈴愛を見守っているという設定で廉子(風吹ジュン)が語りを、後に息を引き取る仙吉(中村雅俊)は廉子と仲良く掛け合いを見せることもあった。

 振り返れば、『ひよっこ』は元マラソン選手の増田明美がまさかの自己紹介から始まるナレーションで大きな話題に。いまだ記憶に新しい『まんぷく』は、朝ドラ語りの最年少として、芦田愛菜が担当した。ナレーションは、物語をそっと支え、ある時には客観的にならなければならない難しい立場でもある。それは自他ともに認める朝ドラファンの内村が最も感じていると想像するが、父親でナレーションという稀有な設定を、大いに開拓してほしいと思う。そして出来ることならば、『LIFE!』にて広瀬と共に『なつぞら』パロディを演じる姿が観れることを楽しみにしている。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人/岡田将生、吉沢亮/安田顕、音尾琢真/小林綾子、高畑淳子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

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